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高い山に、碧い空㉒

 12月になると例年通り、街はクリスマスカラーに染まる。

 染まるのは色だけじゃなくて、この時期の商店街はクリスマスソングが流れ、駅前の広場には路上ライブの人が立ち、ライブハウスでも毎晩様々なグループや個人のライブが盛況に行われる。

 今日は部活が終わったあと江角君と横浜の街を一緒に歩いている。

 寒いけれど、江角君の腕に掴まって、心はポカポカなのだ。

 山下公園を抜けて像の鼻パークに来ると、ちょうど野外ライブが行われていた。

 この寒さなんて知るものか!って言うくらいステージからも観客席からも熱気で湯気が立っていて元気が溢れている。


 出店も出ていたので、二人でアメリカンドッグを買って、食べながらステージを見ていた。

 甲本君たちの『ブルーSKY』は出ていなかったけれど、あの日里沙ちゃんのお店に出ていた『Out of Date』が出ていて「ロデオハイウェイ」を歌って会場を湧かせていた。


〽自分の弱さが嫌いで堪らなかった――


「ロデオハイウェイのロデオって、あの暴れる馬に乗るロデオの事なのかな?」


「屹度そうじゃないのかな」


 私が聞くと江角君が答えてくれた。


「なんとなく、そういう気がする。人生を道に例えるなら、それはいつも穏やかで平坦な道ではなくて、目標に向かって走れば走るほどいつ振り落とされてしまうか分からない暴れ馬に乗って走っているようなもの」


「そっか……屹度そうだね。私みたいに目標も無くて、いつも高い山や碧い空をボーっと見上げているだけじゃ駄目だものね」


「いや、それも好いと思うよ。それだって立派なことさ」


「そうかな……」


「そうさ。一番いけないのは、俯いてしまうこと。そして他人の空を妬んでしまうこと。鮎沢にとって目標がないって言うのは、どういうこと?」


「う~ん。例えば甲本君のように自分の曲とか、江角君のように立派なお医者さんになるってこと? 私には、そう言う“なりたいもの”が未だ見つかっていないから」


「そうかなぁ」


 そう言って、江角君が笑った。


「なにが可笑しいの?」


「だって鮎沢には、ロンの好いお姉さんと言う立派な目標が有るのだと思っていたから」


「えーっ。そんなの意識していないし」


「誰にだって有るのさ、その意識していない目標って言うのが。それだって決して穏やかではない。いい家庭を作ろうと思っても、ついつい彼氏を疑ってしまったり、喧嘩をしたりしてしまうだろ」


 言われてみると、その通り。

 滝沢さんが現れたとき、私は江角君の心が私から離れてしまったと、挫けてしまっていた。


「人生ロデオハイウェイか……」


 そう思いながら曲に合わせて「ロデオ!」「ロデオハイウェイ!」と、会場に集まった人たちと一緒に声を出して歌っていた。

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