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高い山に、碧い空⑳

 休みの日、江角君と河口湖に行った。

 今日はロンも一緒。

 三人で人生初のカヌーに挑戦です。

 野生の勘が働くのだろうか、車から降りたロンはいつもより躍動的にリードをグイグイ引っ張る。

 いつもなら「引くな!」と言って落ち着かせるのだけど、最近はロンも年を取ったと感じてしまい“自由に動けるうちは好きにさせてやろう”と思ってしまい、だいぶ甘い。


“まあ、もとの躾がいいから、いいよね!”


 と、言う事で私たちと同じようにロンも確りライフジャケットを着て、インストラクターの先生の話を聞いてイザ出発!

 ロンは喜び勇んで水に飛び込むようなタイプではないけれど、泳ぐのは嫌いじゃないからどうするのかと思ったら、水際迄走ってお座りをして私を見た。

 最初は漕ぐのにも慣れないから、落ち着いて居たいから抱っこしてカヌーに乗せる。


「じゃあ行こうか」


 私たちがカヌーに乗ると、先生が押してくれ、江角君が漕ぎ出す。

 両手で漕ぐオールじゃなくてパドルだから私も反対側を漕ぐと、カヌーは湖面を滑るように進んで行く。

 私たちのカヌーの隣を、レトリバーがスイスイと泳いでいるのを見ていたロンは、暫くすると飽きたのか私の膝に乗ってきた。


「もう、甘えんぼさんね」


 そう言いながら、水しぶきが掛からないように漕いでいると江角君が「俺一人で漕いでみたいから休んでいていいよ」って言ってくれたので、私も江角君に甘えることにした。

 膝の上のロンが暖かい。

 目の前には富士山。

 そして碧く高い空。

 甲本君や京子ちゃんは、あの空を掴もうとしているのだ。

 そして瑞希先輩は、あの山に登る。

 それぞれが、それぞれの夢を追い求めて高い山や空を目指す。


「ねえ、江角君の夢ってなあに?」


「俺の夢……医者になる事」


「それって現実的だね」


「そうでもないよ、俺の夢は医者になって全ての患者さんに幸せになってもらいことだから」


「全ての?」


「そう。癌であろうが何であろうが、全て俺が治す」


「まあ。勇ましいのね」


「患者が諦めない限り、その体内には自然治癒力が働くんだ。だから俺はその治癒力を充分に引き出す手助けをする」


「私にも有るの?その自然治癒力って」


「誰にだってあるよ。むしろその力は男性よりも女性の方が強いと言われるくらいだから」


「ロンにも?」


「もちロン」


 最後は、駄洒落になってしまっていて、二人で顔を見合わせて笑った。


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