高い山に、碧い空⑦
土曜日。
お休みのこの日、ロンと一緒にピクニックに出た。
私とロンのお弁当と水を持って、長い河原を散策する。
所々に伸びたススキが微かに吹き出した風と揺れ、高い空に登れない赤とんぼと戯れている。
春はタンポポをはじめ沢山の低い草花に覆われていた河原にも、今は遠ざかって行く太陽に手を伸ばすように背の高い草花が目立ち、視線を遮られ自然と視線が持ち上がってしまう。
でも綺麗な上の景色をのんびり楽しむわけにもいかないのは、背の高い草花に全く興味を示さない地面専門のロンが居るから。
地面にはペットボトルの殻や食べ終わったお弁当のケースとビニール袋、それに花火の残骸など夏の落とし物が一杯。
その中にはまだ残っているものあるから、うかつにロンが口に入れやしないか心配で、景色をのんびり楽しむ余裕はない。
空も川の水も綺麗なのに、地面だけ人間によって汚されているのを、その一人として残念に、そして恥ずかしく思う。
私の気持ちも知らないで、ロンはそのごみの匂いに興味津々でハラハラさせられる。
1時間くらい河原を散歩していると、大きな木の木陰に白い岩がベンチのようになっている格好の休憩ポイントを発見して、私たちはさっそくそこで休憩することにした。
レジャーシートを広げ、濡らしてきたタオルでロンの手足を拭き、それから器に水を灌ぐ。
余程喉が渇いていたのだろう、ロンは勢いよくその水を飲んだ。
ロンが水を飲んでいる間に私もおしぼりで手を綺麗に拭いて、わたしとロンのお弁当を取り出して食べる。
ロンは食べるのが早い。
お手、お替り、よし。
そう言って食べ始めると、ものの十数秒でペロリ。
まあ、もともとの量を少なくしているのもあるけれど、それにしても早い。
食べてから直ぐに動くのは危ないから、私はゆっくり食べて、食べ終わってから持って来た電子楽器を演奏する。
いろいろな音が出るし軽くて持ち運びが便利、それに外に音を出さないでイヤホンで聞ける機能もあるので、バイト代で買った。
今日は河原だから、イヤホンは付けないで演奏する。
本物の音には及ばないものの、いつでも手軽に楽しめるのと、いつもと違う楽器にも挑戦できるのが大きい。
ロンはお腹も膨れて、わたしの音楽を聴きながらお昼寝を始めた。





