高い山に、碧い空③
相模湖にはペットの犬と遊べるスペースを設けてあるレジャーランドもあるのだけれど、そこには行かないで公園でのんびり遊んだ。
広い湖には、観光用のボートやカヌーが行き交い、公園には子供たちの遊ぶ声、そして水辺に近い所に佇むカップルたち。
澄んだ湖水が空の碧さと、森の緑を鮮明に映し出す。
「えいっ!」
転がっていた石ころを湖に投げてみた。
すると江角君が私の顔を見て言った。
「いま、千春さんが投げたのは、この金の石ですか?それともこの銀の石ですか?」
まるで伊藤君が言いそうなことを、真面目な顔で言う江角君。
正直似合わなくて、逆に可笑しい。
チョッと困らせようかと思って、答えた。
「いいえ、私の投げたのは金の石でも、銀の石でもありません。キラキラ光るダイヤモン
ドの石です」
「そうか、では可愛い千春さんのためにダイヤモンドを上げよう」
えっ!?
まさか、本当に??
「それ!好きなだけ取るがいい」
そう言って江角君は、パッと手を湖面に向けて広げた。
すると、そこには日の光に照らされてキラキラ光るダイヤモンドを散りばめたような光が沢山あった。
それは何気ない水面の輝き。
手に取ること、身に着けることは出来ないけれど、その光景はまさしくダイヤモンド……いや、それ以上のものだった。
「素敵」
そう言って、江角君の腕を確り掴んで、いつまでも江角君のくれたその輝きを見ていた。
江角君に家まで送ってもらって、久し振りに二人でロンの散歩に行き、そして江角君は帰った。
夜の散歩のとき、ロンに言った。
「ロンの欲しい物はなんだね?この金の石か?それともこの銀の石か?」
“僕が欲しい物は金の石でも、銀の石でもないよ。僕が欲しいのはダイヤモンドの石!”
「それでは、可愛いロンのために――」
そこで、初めて気が付いて顔が赤くなった。
だって江角君たら、あの時私の事“可愛い”って言ってくれたんだもの。
手を空に広げてみせると、ロンもその手につられて上を見上げる。
夜空には、手に取ることのできない沢山のダイヤモンドが光っていた。





