令和⑦
足立先輩から連絡があった。
内容は、久しぶりにコンサートをやらないかというもの。
コンサートの日にちは、次の土曜日。
メンバーは足立先輩の他に、山下先輩、瑞希先輩、マッサン、コバ、今川さんで既に打診済み。
あとは私が参加するかしないかだけで、場所も確保してあるとのこと。
この構成だと私を誘わなくても、マッサンのピッコロが入るけれど、既に木簡五重奏が出来上がっている。
「入れてもらっても良いのですか?」
オーボエ奏者だけ私と足立先輩の二人になってしまうので、聞いてしまうと「私はピアノを弾くからいいよ。ってか久し振りにピアノやってみたいから誘ったのよ」と言われた。
そう言えば、聞かせてもらった事はないけれど、足立先輩の部屋には確かにピアノがあった。
「では、お願いします。で、集合時間や会場は?」
「じゃあ、土曜の11時に千春の家に迎えに行くね。それじゃ!」
言うなり通話を切られた。
“あれ、会場を忘れている……”
そう思ったけれど、また後で連絡があるだろうし、足立先輩が迎えに来てくれるということは、そのまま会場に連れて行ってくれるということだから、特に深くは考えなかった。
結局、足立先輩からは何の連絡もなくて土曜日が来た。
11時。
足立先輩の車が家の前に止まる。
降りて来た先輩は、真っ直ぐに出迎えるために玄関を出たロンと遊びだす。
「ロン、相変わらず元気ねぇ」
前はたまに朝夕の散歩の時間に会っていたけれど、先輩が務め出してからは時間が合わなくなり、ここ最近会っていないからロンも大喜び。
「じゃあ、お姉ちゃんのことチョッと借りるね!」
そう言ってロンの頭を撫でて、私の手を引っ張る。
私を乗せると、今川さん、コバ、マッサン、瑞希先輩、そして山下先輩を乗せて車は進んで行った。
車窓から見える懐かしい景色。
「あれっ、コンサートってもしかして学校?」
「違うよ」
私の問いに運転している足立先輩が、まるで、ほかの人が答えるのを制するように、直ぐに答えた。
でも、車は駅前の道を学校のある方へ曲がり、そして坂道を上る。
“どう考えても、このコースだと学校へ着く”
三年間通った懐かしい道を見ていると、坂道の途中で車が曲がった。
“あれっ。これって”
そう、この道を曲がるとハンター邸の白い病院。
私が高校三年生の時以来、久し振りにここでコンサート。
そして、今日、土曜日は江角君も居るはず。





