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令和④

 日曜日、待望の令夏ちゃんを連れて兄と美樹さんがやって来た。

 お父さんもお母さんも大喜び。

 もちろん私とロンも。

 外でお出迎えしたときなんか、ロンたら美樹さんが抱っこしているものに興味津々と言った様子で何度も飛びつこうとして、そのたびに私が注意していた。

 部屋に上がって、ソファーに座る二人の間に寝かされた令夏ちゃんが気になってしょうがないないロンは、そこにべったり張り付いてもう完全に令夏ちゃんのとりこ。


 令夏ちゃんが何か声を出すたび、手足を動かすたびに“なんだろう?”と身を乗り出して“何か言ったよ!” “動いたよ!”って報告するように、私を見る。

 お父さんもお母さんも私も、新しく生まれてきた赤ちゃんが嬉しくてしょうがないけれど、ロンのこの嬉しさには負けると思った。

 ロンには失礼な言い方だけど、犬のロンが人間の赤ちゃんをこんなにも喜んでくれるなんて思ってもいなかった。

 まるで、自分の子供のように可愛がり、気になる様子。


「女の子だったら母性があるから、そうなるかも知れないとは思っていたけれど、男の子なのに凄いわね」


 と、このロンの様子には専門の勉強を海外でしてきた美樹さんも驚いていた。


「だって家族だもの」


 私は、美樹さんが驚くほどではなくて、そんなロンを頼もしく思って言った。


「犬は家族や集団の意識が強いから、新しい家族も直ぐに受け入れてくれるのね」


 美樹さんも感心して、令夏ちゃんの傍にべったり張り付いて離れようとしないロンを褒めて、撫でてくれた。

 私は、まるで自分の事のように褒められるロンを見て嬉しくて、ちょっぴり令夏ちゃんが羨ましく思えた。

 私も、ちっちゃいときにロンと一緒だったら、どんなにか楽しかっただろう。



 お昼ご飯はお母さんが腕によりをかけて作ったご馳走。

 まぐろのトロの部分や、サーモン、甘えび、いくら、イカにアナゴが乗った海鮮ちらし寿司に、鯛の切り身の入ったお吸い物、それに“とびっこ”の入った海藻サラダと手作りの茶わん蒸し。

 私も、ちらし寿司の中に入っている錦糸卵と海藻サラダは手伝ったのよ。

 みんなで美味しく食べていると、何故かいつもおとなしくしているはずのロンがソワソワして落ち着かない。


 私たち人間の食べ物は与えたことがないし(勝手に調理中の、ちくわの磯部上げは盗み食いしたことはあるけれど)ロンにはちゃんとロン用の手作りのご飯も用意してあるのに……。

 何だろうと思って話をよく聞いてあげようと思って席を立ち、ロンの傍に寄り添うと、どうやら私を令夏ちゃんのところに連れて行きたがっているみたい。

 それで気が付いた。


「ロン。私たちは令夏ちゃんのご飯を忘れている訳じゃないのよ。令夏ちゃんはまだ赤ちゃんだからミルク以外食べられないの。心配してくれてありがとうネ♡」


 ロンの優しい気持ちが身に染みて、瞼が熱くなり、しばらくロンを抱いていてあげた。


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