潮騒②
「これ、もう4万回再生されてるじゃん!」
「でしょ」
「まあ、僕はこの程度の反響はあると思っていたよ。歌も良かったし、ピチピチのギャルたちのルックスも……」
「ピチピチのギャルたちって、あんた昭和かよ!」
住之江部長の言葉に美緒が突っ込みを入れた。
「ボーカルの千春ちゃん可愛いし、こんなに歌も旨いなんて知らなかったわ」
「滝クリともう一人のコーラスが、お姉さんっぽい好い味出してるしね」
「この、もう一人の女の人だれ?美人だけど千春ちゃんよりは年上に見えるわね」
「千春ちゃんと比べたら同じ歳の滝クリだって、随分年上に見えちゃうよ」
「でも、子供には見えないんだよね」
「そうそう。高校生にも見えないのに、あの若さってなに?」
「あの若さって、あんた一個上なだけでしょ!」
急にガヤガヤと周りを囲んだ女子たちが話し始めた。
「Shut up!!」
その言葉の騒めきの渦を止京子ちゃんの声が止める。
「問題は、そこじゃないでしょ」
「誰がアップしたか?」
「いいや、そこは違うだろう。結婚式の余興なんか良くアップされているから。問題はこれがアップされた日から、まだ3日しか経っていないのにアクセス数が4万と伸びている点だよ。もしも著作権法に基づく楽曲使用料を請求されたら、馬鹿にならない」
「いや~住之江部長、アンタ惜しいって言うより、どこかオカシイよ。営利目的で歌っているんじゃないから」
「そうか!請求されるとすれば再生回数により広告収入を得る、この動画をアップした人間のほうだ!」
住之江部長が、ポンと手を打って納得した。
「駄目だな、コイツ」
それを見て、高橋さんが小さくつぶやいた。
相変わらず、クールでキツイ。
「もーっ!……」
話が脱線するばかりで、不貞腐れた京子ちゃんに、コバが言った「まだ、なにも起きてないんだから、焦って心配しない」って。
なんだか、いつものコバと同じような少し違うような変な感覚。
「そうそう大丈夫だって、たかが素人が編曲した曲に、たかが素人が腰振って歌っているだけなんだから」
「たかが素人が編曲した曲……」
「たかが素人が腰振って歌っているだけ……」
思わず口を滑らせてしまった伊藤君の背後には、指をポキポキ鳴らして怒っている住之江部長と滝沢さんが立っていた。
「なんともなければいいんだけどなぁー」
京子ちゃんが、心配そうに私を見て肩を落とした。





