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里沙ちゃんの結婚⑪

 二度目のお色直しの時は高校時代学校行事で一緒に良く演奏した『威風堂々』を、ご両親への花束贈呈と、里沙ちゃんのお父さんからの手紙の時は『G線上のアリア』を演奏した。

 里沙ちゃんのお父さんが、私の知らない小さな頃の里沙ちゃんの話をする。

 小さなころから明るくて活発で男勝りな女の娘。

 それがそのまま大きくなってくれたと笑い、笑わせ、そして泣かせてくれた。

 里沙ちゃんも泣いていた。

 初めて出会って七年が過ぎるけれど、目から涙がポロポロと零れ落ち、これ程泣いているのを見るのは初めて。

 中三の夏、最後のソフトボール大会、準決勝で負けたときも軽く涙を拭う程度で、しかも一瞬だったのに。

 結婚して家を離れるという事は、大変な事なのだろう。

 生まれて今まで、いつも当たり前だった事が変わってしまう。

 怒ったり笑ったり泣いたり、いつも当たり前のように気兼ねなく感情を共有し合えた家族との別れ。

 そしてこれからは茂山家に入って、その関係を築く。

 茂山さんのお父さんもお母さんも、好い人だから大丈夫。

 なによりも、里沙ちゃんは愛嬌のある活発な子だから。

 アッと言う間に閉会時間が来た。

 新郎新婦と、そのご家族が退場する。


“ねえ、ひとつだけお願いしていい? 式の最後、私たちが退出するときの曲なんだけど―― ”


 里沙ちゃんのリクエストを住之江部長に話すと、何も書いていない譜面を江角君に渡して言った「これは一番鮎沢さんの良さと、里沙さんを知っている君が書くべきだよ」と。

 江角君は「ハイ」とだけ言って曲を書いて来て、今日はその曲を披露する。

 夏花さん(ハンター邸の女医さんで江角君の叔母さん)のピアノに、私のオーボエが続き、そして江角君のヴァイオリンが絡んでくる。

 それから足立先輩のオーボエや瑞希先輩のフルートなどが徐々に加わってきて木管とヴァイオリンの大合奏になり、そして最後は看取るように江角君のヴァイオリンに導かれながら私がオーボエに最後の息を送る。

 まるで一人の人生の、出会いと別れを綴ったような曲。

 この曲を、里沙ちゃんに送った。


“私は、千春みたいに感動屋さんじゃありませんから”


 そう言っていた里沙ちゃんに、最後の最後で抱きつかれて号泣された。

 泣いている里沙ちゃんを、泣かない私が慰める。

 ひょっとしたら里沙ちゃんがいつもクールだったのは、私が直ぐ泣いてしまうから泣けなかっただけかもしれない。

 里沙ちゃんを慰めながら、そう思った。

 いつまでも、いつまでも里沙ちゃんは泣き止まず、私はいつまでも一緒に居てあげた。



“ そう。 いつまでも、一緒だよ。 里沙ちゃん ”


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