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里沙ちゃんの結婚⑨

 いよいよ出番!

 緊張するけれど、物怖じはしない。

 里沙ちゃんの晴れの舞台だから、恥ずかしくないように一所懸命頑張ろう!

 会場のドアが開くのを合図に住之江部長の指揮棒がゆっくりと振られ、厳かに『カノン』の調べが始まりそこからリズムの効いた『Life is cool』に移行して行く。

 ドラムのリズムに合わせ美樹さん達三人の美女ダンサーズが、長いてを大きく振り上げて手拍子をする。

 そして私が歌う。

 里沙ちゃんを真直ぐに見つめながら。


〽 I nevr really try to be positive --------♪


 会場に入って来た時、直ぐに『カノン』の調べを聴いて懐かしそうな顔をした。

 そう。この曲は私たちにとっては、高校二年の吹奏楽コンクールで演奏した思い出深い曲。

 一年生のときは未だ大会メンバーに入れなかった里沙ちゃんにとっては、初めての大会メンバーとして舞台に上がって演奏した思い出深い曲に違いない。

 そして、それが『Life is cool』に代り、私が歌い出すと目を丸くして驚いたのが分かった。

 美女ダンサーズのコーラスと手拍子につられて、会場も歓迎の手拍子に包まれる。

 甲本君と高橋さんによる、二台のドラムが痺れる程素晴らしい。

 クールなはずの里沙ちゃんの瞳が、キラキラと光っている。

 丁度里沙ちゃんと茂山さんが舞台に上がる頃、曲も終わる。

 私の傍で、おとなしくしていたロン。

 実は、今日の結婚式にはロンにも重大な役目がある。

 それは、新郎新婦への花束贈呈。

 チャンとできるか不安は無かった。

 だって、黒子として私が着いて行くんだもの。

 そして無事に花束贈呈も終わり、里沙ちゃんがお色直しに退席すると、私もロンを連れて会場を出た。

 理由は、ロンの散歩なの。

 人間だって緊張してしまうのだから、犬だって――いや、犬だから余計に緊張する。

 見た事も無い人たちが沢山居る中で、ズッとおとなしくして居なければいけないのだから。

 綺麗なドレスに、お散歩用のエチケットバックを持ち散歩する姿は、人から見てどのように感じるのだろう?

 綺麗なお姉さん?

 それとも、変な人?

 どちらに見られたとしても、構わない。

 だって、これはロンのために必要な事なのだから。

 おしっこの処理をして、足早に会場に戻る時、ロンは駆けっこだと勘違いしたのか大喜び。

 会場に着くと、丁度お色直しが終わり、出番を待っている里沙ちゃんと出くわす。


「ありがとう千春。歌、初めて聴かせてもらったネ、最高だった」


「ありがとう」


「ロンも花束ありがとうね」


 里沙ちゃんがロンを撫でてくれる。

 会場内では、誰かのスピーチが終わり、拍手が始まった。


「里沙、そろそろ出番だよ。私も頑張って演奏するからね」


 そう言って先に中に入ろうとする。

「千春!」


 里沙ちゃんの声が私を止めた。

 振り返った私に、里沙ちゃんが言う。


「結婚しても、友達でいてくれる?」


「当たり前でしょ。こちらこそ宜しくだよ」


 そう言って会場の中に入った。

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