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里沙ちゃんの結婚①

「ねえねえ、引き出物に何貰ったら嬉しい?」


 今日は里沙ちゃんと横浜に来ています。

 そして今は、みなとみらいにあるカフェの、開放的な運河沿いのテラス席でティーブレイク中。


「記念に残るようなものがいいか、それとも実用的なものがいいか、って聞かれたらどっち?」

「う~ん……」


「例えば、二人の名前と結婚の年月日が刻み込まれた壁掛け時計と、ティーカップのセットだったら?」


「やけに、具体的ね。いま、その二つに絞り込んでいるのね」


「そうなの。いまここでお互いが平行線なのよねー」


「里沙が壁掛け時計で、茂山さんがティーカップ?」


「あー、その逆。ギフト券って言うのもなー」


「えっギフト券だと好きな物買えるじゃない。結構良い物もあるよ」


「そうだけど……」


 そこまで言って里沙ちゃんは、運河を沖に出て行くボートを目で追って、カシスフルールに挿していたストローをクルクルと回していたけれど、突然頭を抱え「あーっやっぱり駄目駄目!」と言い出した。


「ほら、ギフト券ってご祝儀いくらもらったかで、相手に渡すギフトの金額決めるでしょ」

「そうね」


「なんか、それって大人の事情入っていて嫌だな。何となく相手を値踏みしているみたい」


 たしかに。

 大人になると、お金が全てではないにしろ、お金の価値は大切にする。

 子供の時は、高い安いよりも先ず優先するのは欲しいか欲しくないか。

 例えば絵本を読んでいて、その絵本にドングリが出て来たとする。

 そして、そのドングリがどうしても欲しいと思ったときにもらえるドングリは最高の宝もの。

 つまり、里沙ちゃんは今まで大人ぶってはいたものの、結婚を目前にして少女を卒業してしまう前の最後の抵抗をしているのだと思った。


「わぁ~っ。空が綺麗」


 私が、そう言って背伸びをすると、里沙ちゃんはそれが気に入らないらしく「ねえ千春聞いているの!」と呟く。


「ねぇ里沙、この空見て何か思い出さない?」


「思い出す……?」


 そう言って里沙ちゃんも、空を見上げる。


「中学三年の夏、里沙が投げる最後のソフトボールの試合を茂山さんたちと見に行った日の空に似ていない?」


「そうね、似ているかも――」


「九十九里浜で見た空にも似ていない」


「そうね……」


 ただの雲一つない青い空と言うだけの共通点。

 その空が15歳の夏に見た空と19歳の夏に見た空、そして今を繋ぐ。

 人は成長と共に姿を変え、時代と共に考え方も変わる。

 でも、空は変わらない。

 もちろん雲の具合で毎日空の表情は変化するけれど、よく見ていると必ず“いつか見た空”が現れる。

 そして、その空を見た私たちは、そのときの気持ちを思い出す。


「茂山さんと、もっと話し合って、何にするか楽しみなさい」


 そう里沙ちゃんにいうと、少し恥じらうようにニッコリ笑って「そうする」と答えが返って来た。


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