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ビバ、オーケストラ♪㉔

パコンッ☆


「い、痛ぁ~!」


 いきなり滝沢さんが、住之江部長の頭を叩く。


「お前の思い出話で、一話分のページ使うってあり得なくね?」


「そうそう、私たちの存在はどうなるのよ!」


 美緒が立て続けに言う。


「しかもPV取れてねーし!」


「えっ!それって何のこと?」


 私が聞くと、それは内輪の話だと教えてくれなくて、そのかわり「知らない男に、生足触らせるな」と怒られてしまった。

 そして美緒が“住之江部長の話した内容が『ミルクを零した河⑤と⑥』”だと、こっそり誰かに囁いた。


「それで惚れた?」


「ま、まあ……」


「そりゃあ惚れるよな、耐性の無い男がいきなり、うら若い美人女子大生の胸触って生足掴んじゃったんだから」


「ただ、そのときはそれっきりの出会いと諦めていた、そしたらあるとき中庭で見つけた」


「だだ、そこには千春だけでなく、隣には理想の彼氏が居た」


「まあ、理想かどうかは分からないけれど……」


 その言葉に滝沢さんが食いつく。


「理想に決まっているでしょ、容姿端麗で頭も良くて、しかも彼女思いなんだから!」


「いや、容姿とか頭の良さは理想の彼氏には関係ないでしょう。彼女思いだって、それは付き合っているから当たり前で、もっとも重要なのは不変のものなのかということで、他にもっと見てくれの良い女が近づいた場合にも、チャンと信頼を与えられるかと言う方が重要だと俺は思う」


「つまり、紘ちゃんみたいなカッコイイ系は女に不安を与えるけれど、アンタみたいなブサイク系は安心して付き合えるってことが言いたいわけ?」


 さすがに、そこは言葉が過ぎると思った。

 だけど、住之江部長の言いたいことも分る。

 たしかに、江角君はモテるという概念が常に付きまとうので、この前の滝沢さんとの一件みたいに、綺麗な人が現れると直ぐに懐疑的になってしまう。


「それで……僕の気持ちも知らないで、恋人を連れて入部してきた千春に嫌がらせをして入部を断念させようと思ったと言うわけね」


「――すまない」


 こうして、住之江部長が私を避けていた訳が分かり、二人のおかげでチャンと同じ部員として分け隔てなく仲良くしていくことも決まった。

 そして最後に滝沢さんが言った。


「それにしてもスミノエ・ボートって競艇か?」と。


 その問いに対して部長が言った。


「スミノエ・フサト」だと。


 美緒が言う。


「フサトの割には、髪薄いじゃん」


 美緒は住之江部長の地雷を踏んでしまった。


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