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ビバ、オーケストラ♪㉒

「どうしたんですか、頭を上げて下さい」


 私が慌てて、土下座している部長の肩を抱き起すつもりで掴もうとすると、部長は地面の上でクルリと体を回転させ、上半身だけを起こす変な格好になった。

 よく言えば“人魚のポーズ”

 そして目の前に差し出されたのは、黒い財布。


「えっ……な、なに?」


「えっ、ち、違うの?……じ、じゃあ、なに?」


 見つめ合う部長と、私――。


「ハイ、漫才は終わりぃー!」


 滝沢さんが部長と私の間に、言葉の壁を作ってくれた。


「千春ちゃん、いったい何がしたかったわけ?」


「私は、ただ部長さんが中庭の沢山人が見ている中で、滝沢さんと美緒に責められているから場所を変えようと思っただけ……」


「何のために」


「それは――部長さんのプライドのため」


「じゃあ、住之江部長は、ここで何をされると思ったの?」


 住之江部長はビクッとして「そ、そりゃあ、こんな人気のない場所に連れてこられたら、普通分かるだろ。そ、その――か、カツアゲ」


「まあ!」


 カツアゲと言う言葉を聞いて、驚いた。


「そんなこと、しません!」


「だよねー! でも私も美緒も、ひょっとしたら、するのかなーって期待していたんだけど」


「期待しないでください!そんなこと」


「そ、そうだよ。鮎沢さんがそんなことする訳が無いだろう!」


「あら、カツアゲされると言った張本人が、いやに強気で言うのね」


 一瞬元気になった部長が、また直ぐシュンと縮こまって「い、一般論を言ったまでだ」と開き直って不貞腐れた。


「で、美緒。どうだったの?」


「うん。やっぱりあったよ。ほらこれ」


「あらっ、ちっこいねー」


「しょうがないだろ、中学時代から使っている古いガラケーなんだから。って、オイ!それ俺の携帯」


「だまらっしゃい!このストーカー野郎!この証拠品が目に入らぬかぁ~!」


「頭が高い!控えろぉ~!」


「ははぁー」と平伏す部長。


 なにが写っているのかと思って覗き込むと、そこにあるのは中庭の池の写真。


「これって、ただの池の写真だよね」


「千春~。相変わらず鈍い」


「何で?」


「ほら、よく見なさい。ここ。中央のベンチに小さく映っているでしょ」


 たしかに私らしき人が小さく写っては居るものの、中庭の風景を撮ったときに偶然移ったと言えなくもないので、部長さんを擁護した。


「まっ!なんてお人好しなの?前から浮世離れしているとは思っていたけど、そこまでお人好しとは思っていなかった。ストーカーよストーカー!わかる?女の敵なのよ!」


 私の言葉が不味かったのか、美緒は矛先を変えて私に突っかかって来る物だから、私はただタジタジになるばかり。

 美緒の剣幕に押されたのか、滝沢さんも助け舟を出してくれない。

 そして、困った私を助けてくれたのは、なんと住之江部長の一言。


「もういいよ。全部話すから」

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