ビバ、オーケストラ♪⑯
「ちょっと、いい加減にしてくださいよぉ!」
部室に太い女性の声が響いた。
「おかしくないですか?この前も今日も!」
前にスッと現れたのは横幅の広い女の人。
「歌謡曲に毛が生えただぁ?馬鹿にするんじゃないよ。一体何様?この前も後半は完璧で全然落とされるレベルじゃなかったわ」
部室がシンと静まり返る。
「い・いや、朝岡さん何を言っているのか……と・と外様の分際で」
「とざまぁ~?!いま外様って言ったよね!」
「い・いや、あっ、そ……」
執拗に責める朝岡さんと言う人に、部長はタジタジ。
「部長、私も変だと思います」
「私も!」
「僕も!」
瞬く間に部長を責める輪が広まって、もう練習どころではなくなった。
みんなから責められた部長さんが、逃げるようにして私の所へやって来た。
「き、きみ、な・名前なんだった?」
「鮎沢ですが……」
「あ・あ・あゆさわ、さんね」
「はい」
「わ・分かった。て、て」
「?」
「だ、だから、手を貸せって言ってるんだよ!」
訳が分からないまま手を出すと、部長さんが私の手を持ち上げて
「ハイ、鮎沢さん合格しましたぁ~。これから宜しくお願いしまぁ~す」
そう言って逃げるように部屋を出て行こうとする。
「あの!入部届は?」
「あー、朝岡にもらって、今日から適当にやればいいよ」
そういって出て行ってしまった。
まあ、なんとか入部できたみたいだけど、これは一波乱も二波乱もマダマダ有りそうな予感。





