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別れと始まり⑦

 すじ雲が真っ赤に染まり、やがて紫から夜の色に包まれるまで、私も江角君の優しさに包まれるようにロンと一緒に身を委ねていた。


「モテモテだよね♪」


「えつ」


 江角君が不思議そうな顔で笑う。


「だって、私だけじゃなく。ロンにも甘えられて」


「あっ、ああ、ほんとだ」


 私が江角君の胸に抱かれて一緒に空を眺めている間中、ロンは江角君の膝に乗り二人に撫でられていたから、ロンも私たち二人に甘えさせてもらっていた。

 そして私も。

 結局三人が、他の二人を認め合うように織りなしていたと思うと、とっても気持ちよく春の風を受け入れることが出来た。


「ねっ。聞いてもいい?」


「なんでもどーぞ」


「私がインフルエンザにかかる前の日、滝沢さんの車でどこ行ったの?」


 すっかり調子に乗ってしまい、思わず気になっていたことが口から出てしまった。

 正直、マズイと思った。

 折角好い雰囲気だったのに、地雷を踏んだ。


「あの日……ああ、あの日は秦野の叔父さんが急に亡くなって――そっか、あの時点ではまだ危篤だったから、鮎沢には“急用”とだけしか伝えてなかったよな。ゴメン」


「そっ、そうだったんだ。大変な時に、こちらこそ御免なさい」


 地雷は爆発しなかった。

 大変なことがあったのに、答えてくれて嬉しかったけれど、私が聞きたかったのはそこではなくて、どーして滝沢さんの車に乗ったのか? だ。

 その事が頭に浮かんだとき、ロンが急に私の膝に立って、おでこを私のおでこに合わせに来た。

 この逆の仕草は、ロンが何か悪い事をしたときに、私がする仕草。

 でも、今回は、その逆――。


“そっか! 私は今、ロンに怒られているのだ!”


 それはさっき気が付いたことを、もう忘れてしまっていた私に対しての注意だ。

 わがままばかり考えていた私に対して、江角君はズット私を見ていてくれたことに感謝したばかりなのに。


「ごめんね、ロン。ちゃんと信じるよ」


 私が答えると、直ぐにロンは許してくれた。

 それから、三人で河原を散歩して江角君に送られて家に帰った。


「ありがとう。江角君♡」

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