別れと始まり⑥
会が終わり、みんなを見送ったあと江角君とロンを連れて河原を散歩した。
なんだか話があるみたい。
そいう雰囲気に女の子のアンテナは敏感だから、いつもは一緒に散歩をする足立先輩や瑞希先輩、それに里沙ちゃんも早く帰ってしまい河原に残ったのは私と江角君だけ。
楽しい事のあった後だけに、少し不安になっている私なんか気にもせず、ロンはあっちこっちの匂いを楽しみながら散歩を堪能して、全く役に立たない。
もっとも、ロンに心配されたところで江角君が切り出す話は、変わりはしない。
三月の夕方に微かに吹く風が、もう直ぐそこまで来ている春の爽やかな香りと切なさを運ぶ。
二人で堤に腰掛けて、目の前に広がる河の流れと、草の臭いを嗅いで遊ぶロンを眺めていた。
心の中で、早く話して欲しい私と、このまま話さないで欲しい私が葛藤する。
「空が綺麗だね」
江角君の言葉に、心臓の太鼓打ちがドンと大きな音を鳴らせて私を驚かせ、一瞬私は座った体制のまま1ミリほど空に浮いた。
「そ、そら……?」
ドキドキしながら江角君を覗く。
「ほら綺麗な、すじ雲」
「すじ雲?」
江角君が指さした先には、西の空に薄っすらと筆で伸ばしたような雲の筋が出来ていた。
「夏の入道雲を見ていると、なんだか勇気が湧いて来る。秋のうろこ雲は過去を振り返る道しるべ。そして春のすじ雲は、なんだか良いことがありそうな予感を感じるんだ」
そう言われて見上げると、ほのかに霞のかかった青い空にスーッと流れるような雲は、遠い遠い彼方にある願いを空のキャンパスに描き出しているように綺麗な表情を見せていて、その端が傾いて行く太陽に薄っすらと朱色に染まりかけていた。
「俺、オーケストラをやってみたい」
「オーケストラ?」
「そう、吹奏楽じゃなくてオーケストラ」
「だからヴァイオリンを」
「うん。でもヴァイオリンの方は、鮎沢と一緒に演奏したかったからで、別にトロンボーンでも良かった。――ただ……」
「ただ……?」
「ヴァイオリンなら、オーケストラでも演奏する位置は前列だろ。そしたら鮎沢の顔も見えるし」
そう言って江角君は、珍しく照れて笑った。
「一年間待ってもらったけれど、一緒にオーケストラやらないか?」
キュンと胸を締め付けられ、そしてその芯がまるで青い炎のように熱くなる。
私は、その青い炎を抱きかかえるように胸に手を当てて蹲り、涙が零れ落ちた。
私は、わたしはズット自分の事ばかり考えて、江角君を疑っていたというのに、江角君はそこまで私のことを思ってくれていたなんて、恥ずかしくて仕方がない。
「ごめんな、わがままばっかりで」
その言葉を聞いて、私は江角君に飛びついた。
わがままばかりなのは私のほう。
私は江角君の胸の中に顔を押し込み、ありがとうと言った。
そしてズット着いて行くと。





