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春の海㉔

 家の前に車が止る。

 運転席には、江角君。

 そして、助手席には――

 誰も居ない。

 後部座席にも。


「おはよー鮎沢。……んっどうした?」


 マジマジと車を覗いているのが分かってしまったのか、江角君に問われて、慌てて「ううん。なんでもない」と返事を返して改めて「おはよー」と挨拶をする。

 そして、後部座席に犬用のシートとシートベルトを江角君と着け、そしてロンを呼んでそれを装着する。

 ロンの準備が終わったところで、玄関にバックを取りに行くと、江角君も一緒に来てくれて二人で、お母さんに「行ってきます」と声を掛けた。


「鮎沢、そのバック可愛いね」


「ありがとう」


 お気に入りのバックを褒めてもらって嬉しいけれど、中身の半分以上はロンのお散歩セットなのが恥ずかしい。

 それと、あのクリスマスの夜に折角私のことを“千春”って名前で呼んでくれたのに、また“鮎沢”に戻ってしまっているのが少し寂しく感じた。


 家を出て直ぐに高速道路に乗り、行き先は熱海!

 高速道路を茅ケ崎で降りると、箱根駅伝のコースとしても有名な、海岸線を走る国道一号線。

 そのまえに、千石河岸の駐車場に入って海岸を散歩する。

 相模湾の波は大きくて冷たいけれど、その南の太平洋から吹く風は暖かかった。

 ロンを連れて江角君と少し散歩をして、車に戻る。

 ロンを車に乗せる時、砂の上を歩いたものだから、ロンの体の結構あちこちに砂が付いてしまって大変だった。

 小さいレジャーシートを広げて、軽くブラッシングして、そのあとは足の指についた砂を落す。

 江角君が「そんなに綺麗にしなくてもいいよ」と言ってくれるけど、こういう小さなことでも蔑ろにしていると、結局最後には犬を飼っているという特別な環境を自ら作ってしまう。

 それは、犬を飼っていない人の家では考えにくいペット臭であったり、散らかり方なんかだ。

 飼い主が、そのことに麻痺してルーズになってしまうと、ペットを飼っていない人からは異様に思え、関係が途絶え、酷い場合は周囲から孤立してしまうことだってある。

 そうなってしまうと、ペットに余計に入れ込むか、逆にペットなどどうでも良くなってしまうかのどちらか。いずれにしてもペットと飼い主にとって、良い事ではない。


「出来たよ!ゴメン遅くなって」


「いいよ」


 一緒に手伝ってくれていた江角君に、綺麗になったことを告げ、ロンを車に乗せ、最後にレジャーシートに落ちた砂を捨てる。


「ありがと♪」


 助手席に座り込むと、嬉しくて江角君の頬にキスをしていた。


“あれ?あの固かった心は、どこに行ってしまったんだろう?”


 私はチラッと後ろのロンを見る。

 ロンは、なんとなく偉そうな顔をして私を見返したような気がした。


“まっいいか、ロンの手柄にしておいてあげる♡”

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