春の海⑮
熱を出してから三日目、ようやく熱が引いてきた。
熱の高かった間は、本当に何もできなくて寝てばかりいたけれど、熱が引いてしまうと動かないでいた体の節々がまるで錆びてしまったロボットのように動きが悪くて痛む。
今すぐにでも、外に出てロンと散歩をしたり、里沙ちゃんや足立先輩たちとお話しがしたい。
そして、江角君にも会いたい。
朝、お母さんが出て行く前に、熱が引いたことを喜んでくれた。
熱が引いたことを江角君に伝えたら、喜んで会いに来てくれるだろうか?
合いたい。
もし、江角君が私よりも滝沢さんのことを好きになっていたとしても、やっぱり私は江角君に会いたい。
インフルエンザになる前の日から、江角君を避けていた気持ちが嘘のよう。
頭の良い江角君には、屹度私が避けていたことなんて、お見通しだろう。
嫌われただろうか?
あんな態度を取っていたんだもの、嫌われても仕方がない。
悪いのは私。
思えばあのクリスマスの夜、ペンションの近くの森で胸を触られた時から、知らず知らずのうちに私は江角君を遠ざけていたと思う。
そう。
私は、いつまで経っても、ねんねのまま。
人を好きになるということは、絵本に出てくる王子様との恋とは違う。
お母さんだって屹度里沙ちゃんだって、相手の求めることを受け入れてきたのだろう。
それに比べて私は求めるだけ。
二人で行った浜松の時だって、キスをしたい私を江角君は確り受け止めてくれたのに、私はキスに満足していただけで、もしもあの時に江角君が強引に私を持てめて来たとしても私は受け入れることを拒絶したに違いない。
今年の六月、あと半年もすれば私も二十歳。
里沙ちゃんのように、はち切れんばかりのサイズではないけれど、それなりに大人の女性として恥ずかしくないほどの胸の膨らみは有ると思う。
二十歳になれば、法律上でも大人だし、もうそろそろ大人の恋をするべき時なのかも知れない。
ロンと私のような恋人ごっこは、人間同士だと長くは続かないのかなぁ。
ドアの向こうにいるロンが、その時だけ大きく欠伸をしたのが聞こえた。





