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春の海⑬

 家に帰る電車に乗る前に、江角君にインフルエンザにかかって一週間休むことをメールで伝えた。

 しばらくたって江角君から“お大事に”と簡単なメールが届く。

 いえにつくと、直ぐにロンがお出迎えしてくれたけれど、感染させてしまうといけないので、遊ばずに手を洗いうがいをする。

 台所に、お母さん当てのメモを残して、直ぐに自室に籠る。

 もちろんロンは部屋に入れない。

 ロンがドアの傍で、開けてくれと言うように、ドアを擦る音をさせていたけれど「駄目よ」と言い、おとなしくさせた。

 途中のコンビニエンスストアで買ったサンドイッチを食べて、食べ終わるとスポーツドリンクと一緒に薬局で貰った薬を飲む。

 疲れと、病気で直ぐに眠ってしまった。

 夕方、メモを見たお母さんが心配して二階に上がって来てくれた。

 食欲はなかったけれど、お母さんの作ってくれた、おかゆを食べて薬を飲む。

 ロンはずっと私の部屋の前で頑張ってくれていた。

 ロンの為にも早く直さなくては……。

 夢を見た。

 ロンと一緒に宇宙旅行をする夢を。

 太陽に行きフレアのアーチの下を一緒に潜り抜け、それから水星・金星・火星・木星と旅をして土星の輪に乗って何周も周って遊んだ。

 ロンが私の星に行ってみようよと言う。


「私の星?」


「そう。あの夏の日に、千春が教えてくれた星だよ」


「ベガのこと?」


 でも、あの時は江角君と星の話をしていただけで、特にロンには教えていなかった気がした。

 だけどロンはチャンと聞いていてくれいたのだと思うと、嬉しくなった。


「でも……」


「でも?」


「だってベガは、ここから25光年も離れているのよ。そんなに遠くまで行けないわ」


「行けるさ。あの時は行けなくても、今なら行けるさ。だって二人で太陽フレアのアーチのだって、一緒に潜ったじゃないか」


「でも、どの星だか分からない。こんなに沢山の星たちがいて、それに方角だって分からない」


 宇宙に出ている私たちの周りには、見た事も無い数の星々が輝いていて、まるで黒いテーブルの上に沢山のビーズを零したようだった。それに特徴的な風景もなく季節も時間もないこの世界では、ベガがどの方角にあるかなんて分かりはしない。


「大丈夫。思った方向に飛んでいけば直ぐに着くよ」


 何故か自信満々のロンが言った。


「行こう!千春」と。


 私は、ロンの手を取り「行きましょう!ロン♡」と言ったあと、こう付け加えた。


「私の星を見た後は、次はロンの星。でも遊び過ぎないようにしないと、みんなが来る頃に間に合わなくなるからね」


 ロンは楽しそうに振り返り「うん分かった」と言ってくれ「江角君の星には、みんなと一緒に行こうね」と付け加えてくれた。

 私は、その言葉が嬉しくてロンと手を繋いで宇宙の向こうに飛んで行った。

***参考***

あの夏の日に教えてくれた星=青い夏の日⑫

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