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ホワイトクリスマス㉑

 それから二人でリフトに乗り、一緒に滑った。

 ずっと初心者コースしか滑っていなかった私が、足立先輩についてもらい中級者コースも滑れるようになった。

 時々様子を窺っていたけれど、先輩はいつの先輩のままで、昨夜の寂しそうな雰囲気は微塵も感じられない。

 それどころか、私が抜けたあとの犬たちの世話を伊藤君と瑞希先輩がみてくれているのを、手を振って喜びながら滑ったりしている。


 下まで降りて、また一緒にリフトに乗る。

 さっき手を振っていた瑞希先輩たちが、小さくなってまた手を振ってくれるから私たちも手を振り返す。

 犬は近眼だと誰かに聞いたことがあるけれど、小さくなったロンが、私たちに向かってワンワンと大きな声を掛けてくれているのが聞こえる。

 直ぐにでも“ありがとう。お利口さんね”と褒めてあげたいけれど、リフトは容赦なく上がってゆき、そのうちに皆は見えなくなった。

 不意に足立先輩に話し掛けられた。


「今日、知ったの?」と。


「えっ!?」


 一瞬、私が心配していた足立先輩自身の事かと思ってドキッとした。


「百瀬(瑞希先輩)と伊藤君のこと」


「はい」


 違う話しでホッとする。


「知っていたんですか?」


「当たり前でしょ、私結構目ざといから。で、どうして分かったの?まさかあの二人から報告された訳じゃないでしょ」


「マリーの伊藤君に接する態度で、なんとなく」


 そう答えると、足立先輩は急にお腹を抱えて笑い出した。


「なんでそこで笑うんですかぁ? ポイント間違っていません?」


 笑いを誘うようなことを言った覚えのない私が、少し不満吟味にうったえると、足立先輩はニコニコの顔で涙を拭きながら「だって、だって」と繰り返すばかり。


「だって、なんなのですか?」


 少し、むきになって詰め寄ると


「だって、人間の気持ちには疎いくせに、犬の気持ちだったら直ぐに分かっちゃうんだもの」と言って、また笑い始める。


 うーっ。図星だけど、これって本当はいけない事だ。

 凹んでしまう。


「いいのよ。人間はそういった色々なことを、巧妙に隠すんだもの。気が付かないのは、素直に受け止めている証拠なのかもね」


 う~ん……フォローしてくれているみたいだけれど、微妙にフォローになっていない気がする。


「それに比べて、動物たちはどう?愛情表現や、してほしいこと、して欲しくないこと、たいていの場合全て包み隠さず表に出しているのに、どうして私たち人間の多くは気が付いてあげられないの?」


「う~ん。なんでだろう?」


「それはね、見下しているから。大切に思っていないからよ。だからロンのことやマリーやラッキーの事を本当の友達として見てくれている千春には犬たちの気持ちがよく分かる。いくら動物が好きだと言っても、ナカナカここまではいかないわ」


 そう言われると、なんだかくすぐったくて俯いた。

 でも、その原理から言うと、私は人々を見下しているって言うことになる。

 そう思って、慌てて足立先輩の方に向き直ると。


「だから、最初に行ったじゃない。隠し事に気が付かないのは素直な証拠だって」


 そう言うと、足立先輩に頭をナデナデされた。

 やがてリフトが終点について、私たちは一緒に降りた。


「さあ行くわよ、千春。今年最後の滑り納め!」


「はいっ!」


 そうして私たちは、真っ白な雪の上にジグザク模様を描きながら降りて行った。

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