ホワイトクリスマス⑱
林道に戻り、ペンションが見えるころになると、窓際に座り食堂の灯りに照らされている足立先輩が見えた。
大きく手を振ったけど、気づいてくれない。
明るい部屋の窓越しだと、自分が写り込んでしまって外が見えないことに気が付いて、大声で叫ぼうと思って手を口に当てたとき、江角君に止められた。
どうしたのかと思い振り返ると、江角君の指が足立先輩を指す。
あらためて見た足立先輩の顔は、いつもの元気な先輩ではなくて、どこか物悲し気に、私たちがさっきまで見ていた星を見るように遠くを眺めている。
でも、窓を覗いても、室内の灯りで外は見えないはず。
こんな表情をする足立先輩を初めて見た。
急にペンションの中から、ロンの吠える声が聞こえた。
窓越しに見えていた足立先輩も、ロンの方に行って見えなくなる。
家の中では吠えないように躾てあるのに、一体どうしたのだろう?
私は慌てて江角君と、ペンションに戻り、ドアを開けた。
そこには、いつものように喜んでお出迎えの姿勢を取るロンと、隣には足立先輩がいた。
「おかえり。楽しかった?」
そこにはもう、さっきまでの物悲しい表情は想像もできない、いつもの明るい足立先輩が居た。
「ただいま。楽しかったよ」
靴を脱いで部屋に上がる。
それにしても、なんでロンは吠えたのだろう?
そう思って、暖炉の前に戻ったロンに視線を合わせると、急にからかうように仰向けになった。
“それって、さっきの私!?”
急に顔が真っ赤になるのが自分でも分かった。
“ロンは、なんでもお見通しなのだ”
次の日、私は筋肉痛で殆どの時間を犬たちのお世話という、見学の時間に費やした。
そして私の他に、もう一人。
「あーっ、さすがに高校を出てしまうと歳を感じるなぁ!なぁ千春ちゃん♪」
伊藤君だ。
伊藤君の場合、高校を卒業したからというより、あれだけ派手に転びまくっていたら体の節々が痛むのも無理はない。
“?”それよりも……。
「もしかして伊藤君、いま私のこと名前で呼んだ?」
「だよ」
伊藤君は、名前で呼ぶのが当たり前のように涼しい顔をして、パンをかじっている。
別に変な仇名で呼ばれたわけではないけれど、今まで苗字で呼んでいた人が急に名前で呼んでくると、なにがあったのかと思う。
普通は、より親しくなったとか、愛情が深まったとか……二つ目の理由を思いついた時、昨夜の江角君とのことを思い出して急に恥ずかしくなった。
「いいじゃん。鮎沢のお兄さんの家に遊びに行って、そこに鮎沢がいたとして、お兄さんに向かって“鮎沢さんこんにちは”って言ったあとに遊びに来ていた千春に“よう、鮎沢も居たのか”って言うの変だろ」
「それは、そうだけど。でも、なんで?」
「だって、俺たち親戚だから」
そう、伊藤君は美樹さんの従弟。
美樹さんは、兄のお嫁さんだから、伊藤君と私は親戚ということになる。





