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ホワイトクリスマス⑰

 何度もキスと抱擁を繰り返し、江角君の手が私の胸を捉えたとき、思わず「いやっ」と拒み目を開く。

 “めっ!”と悪戯をした子供を睨むようにキュッと目を大きく開いて見せると、江角君は少しバツの悪そうな困った顔をして、直ぐに胸に回された手は離してくれた。

 そして、その代りに私の頭を撫で、さっきより激しくキスを求めてきた。

 江角君が求めるだけ私はそのキスを返し、私が求めるだけ江角君はキスをしてくれる。

 体の芯から熱がマグマのように上がってきて、のぼせて気が遠くなりそうになる。

 急に自分が自分で居られなくなる怖さを感じて、反射的に江角君の首に回していた手を解き、覆いかぶさっている胸を軽く押す。

 押された江角君は、そのまま大きく手を広げて大の字に私の横で仰向けになった。

 お互いの体から湯気が出て、荒い息と共に天に登って行く。

 透き通った夜空の向こうには、果てしなく遠い世界から、星たちが届けてくれる冷たい炎が瞬く。


 急に江角君が星の話を始めた。


「オリオン座で一番明るくて青く光る星はリゲル。地球からは約860光年離れている。その対角にある赤く輝くのがベテルギウスで、こっちは約642光年。ベテルギウスから目を横に移動するとプロキオンが見えてきて、これは約11.5光年。その下に、この冬の夜空の星々の中で一番強く輝いているのがシリウスで、距離は約8.6光年。そしてベテルギウス、プロキオン、シリウスを繋いだ時に出来るのが冬の大三角形」


 江角君が夜空に高く手を上げ、星々を指さしながら教えてくれる。


「シリウスくらいだったら、行けるかな?」


「えっ?」


「ううん、今じゃなくて、私たちがお爺ちゃんやお婆ちゃんになったときに、行けるようになっているかなっと思って」


「行きたい?」


「うん。行って見てみたい。本当の星たちの姿を」


「本当の姿?」


「そう。見せかけではない、その命の源……星たちの魂に、行って会ってみたい」


 江角君は、上げた手を降ろして頭の後ろで組んで言ってくれた“屹度、いつか会える”と。

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