ホワイトクリスマス⑭
ナイタースキー中、ずっと江角君と一緒に滑った。
というより、江角君に優しく教えてもらいながら滑る練習をする。
おかげでボーゲンじゃなくて、みんなと同じようにスキー板を揃えて滑ったり曲がったりすることが出来るようになった。
まだまだスピードに対する恐怖感が拭えないので、コースが真直ぐな所では細目にターンを入れて加速しないようにする。
そんな私の横を、猛スピードで滑り抜けるのは伊藤君。
抜きざまに「鮎沢、お先ぃー!」と、余裕しゃくしゃくと言わんばかりの声を掛けて抜いて行き、その後ろから瑞希先輩が「千春、上手になったね!」と抜いて行く。
伊藤君は私を抜いて数十メートル先で派手に転倒して、後から来た瑞希先輩に起こして貰っていた。
江角君がそれを見て笑ったので嗜めると、伊藤君はスピードに対する恐怖心が全くないから上達が遅いと言い、逆に私は恐怖心があるのでターンを確り練習するから上達が早いのだと褒めてくれた。
褒めてもらって素直に嬉しいけれど、横を通り抜けて行く里沙ちゃんたちのように、スピードもターンも確り出来るように早くなりたい。
そして、江角君と一緒に粉雪を舞い上げながら滑れたらどんなにか楽しいだろう。
そんな日が来ることを夢見ながら、一所懸命頑張っていた。
滑り終えて、皆がゲレンデに集まったとき、私たちは通路を作るように二列に並んだ。
スキー板を雪に刺してストックを空に向け、それを通路を挟んだ向かい合わせ同士でまるでアーチを作るように重ね合う。
そして、そのアーチで出来た通路を里沙ちゃんと茂山さんに歩いてもらい皆でおめでとうと言った。
アーチを潜り終えた里沙ちゃんは喜んで少し泣いていて、私たちが拍手すると、里沙ちゃんが皆もしようよ。と言い出して、同じように並ぶ。
先ずは美樹さんと兄がそこを通り、次は瑞希先輩と伊藤君が通り、そのあとで江角君と私が通った。
まるで中学の卒業式を思い出す。
重ねられた、頭上のストックを見上げると、そこには桜吹雪の代わりに満天の星。
通り抜けたあと、気が付いたのは私たちが七人で来ていること。
つまり奇数なので、最後の足立先輩にはペアがいない。
「私はイイよ」と笑って断る足立先輩に伊藤君が「一緒に潜りましょう」と言うと断られた。
次に江角君が同じことを言ってくれたけれど、これも断られたので「私じゃ駄目ですか?」と言うと「千春とならいいかも」と、グイっと腕を掴まれて二人で潜る。
潜った後、足立先輩が「お口直しが要るでしょ」と言い出して、江角君の腕を取り、私と組ませる。
さすがに二度目は恥ずかしかったけれど、確りと支えてくれる江角君の腕に留まり、とても嬉しかった。
「さあ、あとは自由行動。ペンションに戻るなり、最後まで滑るなり、クリスマスの夜を楽しみましょう!」
足立先輩の号令で皆が笑い、そして解散した。
里沙ちゃんと茂山さん、そして美樹さんと兄はリフトに向かい、瑞希先輩は「お腹が減った」という伊藤君とレストハウスに向かった。
残されたのは、江角君と私。
ずっと私を教えてくれていた江角君は、滑り足りないに違いない。
そう思って「すべろうか」と言うと、江角君は笑って言った。
「そろそろ、気になるころだろう」って。
もちろん、私とロンの事だ。
「でも、滑り足りないでしょ」と私が言うと「滑るのは明日でも出来るけれど、このクリスマスの夜は今日だけだぞ」と、コツンとおでこを突かれ、私は「うん」と答えた。
そして来た道を二人で腕を組みながら並んで帰ることにした。





