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ホワイトクリスマス⑬

 遅い昼食を済ませた後は、私もスキー板を履いて滑ることにした。

 その間、ロンの世話は美樹さん。

 そしてラッキーの世話は足立先輩。

 マリーの世話は瑞希先輩がみた。

 ハーネスを付けたロンとラッキーは、それぞれ美樹さんと足立先輩を引くように一緒に私の周りを走り回る。

 二人はストックも持たずに、まるで普通に散歩するように雪の上を滑る。

 私と言えば、転んでばかりで一向に上達していなくて凹んでいた。

 結局、挫折して途中から瑞希先輩に変わってマリーの世話をした。

 マリーは雪の上で無邪気に遊ぶけど、ロンやラッキーのように夢中で駆けまわることはなく、基本的にはマイペースで瑞希先輩に似ている。

 そのうちにロンとラッキーも疲れたのか、私の所に来て、私はフカフカの毛布にくるまれた。

 目の前を、まるでスキーの選手のように皆が滑って行く。

 ひとりだけ勇猛果敢に、雪の上を転げまわるのは、伊藤君。

 ハッキリ言って、度胸は有るけれど、ひょっとしたら私よりも下手かも。

 江角君と足立先輩が私の傍に来て格好よく止り、替わってくれると言ってくれたけれど、犬たちに囲まれるのも悪くないので断ると、無理やり手を引かれて起こされた。


「ロンたちは私が見るから、千春も滑っておいで」


 足立先輩がそう言うと、江角君が私の手を取って「一緒に滑ろう」と言ってくれた。

 続いて転げながらやって来た伊藤君が「なんなら俺が教えてやろうか」と言ってきたので、それは丁重にお断りして江角君と滑ることにした。

 真っ白なゲレンデに流れるクリスマスソングを聞きながら、一緒にリフトに乗ると、ロンが私たちを見上げていた。


 夕方にペンションに戻り、久し振りに美樹さんと夕食を作る。

 私たちの夕食はオーナーさんが作ってくれたので、開いたスペースを借りてロンたちの夕食を作った。

 足立先輩も時々覗きに来て、凄い凄いと褒めてくれた。

 遠くで流れるクリスマスソングを聞きながら、楽しい夕食。

 お手製の夕食を美味しそうに食べてくれるロンたち。

 食事が終わると、そのロンたちは、長旅とはしゃぎ過ぎたのか、暖炉の前でウトウトと寝てしまった。

 オーナーの小父さんに、ペンションから雪の林道伝いにゲレンデに行けることを教えてもらいナイタースキーを楽しむことになった。

 クロスカントリーのように、颯爽と道を進む皆と、スキーを担いで走って追いかける伊藤君。

 私もスキーを外して走ろうかと思ったけれど「ゆっくりでいいよ」と、江角君に止められた。

 月明かりに照らされた白い林道と暗い森は、まるで妖精が出てきそうなくらいロマンチック。

 周りの景色に気を取られて転びそうになった私を江角君が支えてくれる。


「大丈夫?」


 江角君の暖かい腕の中で私は答える。


「大丈夫じゃない」と。


 江角君が心配して目を丸くしたので、私は「そうじゃなくて……」と言って、持っていたストックを離し、その腕を首に回し江角君の胸の中に顔を埋めた。

 火照った顔に、冷たい江角君の手が添えられて気持ち良い。

 顔を上げると、満天の星々を遮るように江角君が近づく。

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