ホワイトクリスマス⑪
ペンションに着くと、オーナーの小父さんから「大きくなったねぇ」と言われ、小母さんからからは「綺麗なお嬢さんになったわねぇ」と褒めてもらって、くすぐったかった。
そしてロンも大きくなったと褒めてもらう。
玄関の奥の通路からバタバタと騒がしい足音が聞こえ、四匹のミニチュアダックスが走って来た。
ラッキーとマリーは直ぐに彼らの匂いを嗅ぎ合って、挨拶を交わす。
ロンはと言えば私の傍にピッタリと貼り付くようにして、首を上に上げて私に助けを求めてきたので、腰を降ろして顔の位置を揃えてリラックスできるように撫でてあげるとロンは私の顔をペロッと舐めて横目でミニチュアダックスを見ていた。
「前来た時は二匹でしたよね」
私が聞くと、あれから暫くして子供が出来たのだと教えてくれた。
家族で暮らせる犬たちを羨ましく思う。
そうしている間に、ミニチュアダックスたちがロンにも近づいて来て挨拶をする。
ロンは堪り兼ねて腰を上げ、身を隠すように私の背中にまわる。
うちの近所には、ミニチュアダックスを飼っている家がないから気にしていなかったけれど、ロンたらいまだにこの種類の犬が苦手なのだと気付く。
“しっかりしろ!”とか、“うちの子に近づかないで!”とか、むやみに囃し立てたり、過保護にしたりはしない。
私に出来るのは、ただ背中をさすって安心させてあげる事だけ。
ロンを信じてあげる事だけだ。
少しずつ私の気持ちが伝わったのか、それともロン自身が頑張ったのか、ロンの周りで賑やかにコミュニケーションを取ろうとしてくるミニチュアダックスたちに対して、ロンも控えめながら同じようにコミュニケーションを取ろうとする。
そんなロンの所にマリーとラッキーも、まるで応援するように集まって来て、ロンの緊張が徐々に解れていく。
そろそろ大丈夫だと思い、撫でていた手を離しロンの傍をそっと離れようとすると、ロンがまるで“ありがとう”と言う様に私を見つめた。
私は心の中で「頑張れ!私の格好好い人」とエールを送ると、それを受け取るようにロンが積極的にミニチュアダックスたちとコミュニケーションを取り始めた。





