ホワイトクリスマス③
大学にある池の傍にベンチに座り、ボーっとしていた。
もしも、もう江角君がクリスマスの計画を立ててくれていたらどうしようかと。
江角君と一緒に居たい。
でも、京子ちゃんや他の皆とも――。
けれども、もし江角君にクリスマスを二人で過ごそうと言われたら……。
天秤の両端に掛けられた錘は同じ。
ふたつの間に立つ私は。どちらを選ぶべきなのだろう。
「おまたせ」
悩んでいる間に、いつの間にか江角君が横に来てベンチに座った。
なにか今の私とは逆に、いつもの江角君より、少しテンションが高い気がする。
「どうした、なにか悩み事?」
「うっ・ううん。いや……う~ん――」
どう切り出して良いのだろう。
いきなり“今度のクリスマスに私と過ごす予定ある?”なんて、ぶっきらぼうに聞けないし、かと言って“今度のクリスマスに皆でスキーに行かない?”って聞いてしまうと、もしも私のために何か予定を入れてくれていたら、ガッカリさせてしまうし……。
黙って俯いている私の横で、江角君はポケットに手を突っ込んで池を眺めている。
言い出せないで悩んでいる私を、いつものように焦らすこともなくジッと自然体で待ってくれるのは良いのだけれど、こんな時くらいは“早く言えよ!”くらい言って欲しい。
でも、そんな事言われたら屹度ごめんなさいくらいしか言えないのは分かっている。
お互いに、何も言わないで池を見ていた。
それでは、何も始まらない。
「あの……」
思い切って、声を出した。
「なに?」
いつもの優しい顔が、私の言葉を迎えてくれる。
そんな笑顔を見せられたら、切り出しにくい。
しかし、言わなくてはならない。
今度のクリスマスに、皆とスキーに行こうという事を。
もーっ!やけっぱち。
「こ……、こん……金平糖と角砂糖だったら、どっちが好き?」
やっぱり、言い出せない。
それに、私ったら、なにを言っているの?
自分の発言に、自ら引いてしまう。
「金平糖かな。鮎沢みたいに可愛いから」
キャー(#><#)こんな時にそんなこと言わないで~♪
折角エネルギー充填30パーセントから、話し始めたつもりなのに、燃料タンクに穴が開いちゃう。
頭の中で“エネルギー充填不能”と言う警告音声が鳴り響く。
もう今日は諦めるしかない。
そう思ったとき、向こうから見覚えのある影がこちらに向かってくるのが見えた。





