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ホワイトクリスマス①

 母校の全国大会が終わった翌週、足立先輩の家でお茶をした。

 明るい太陽の下、まるで洒落た喫茶店のような白いデッキの上に置かれた丸いテーブルに椅子。エルメスのティーカップに注がれた、ニルギリの紅茶。

 私の家ではウエッジウッドの絵皿を飾りに使っていると言うのに。

 広い庭で遊ぶロンとラッキー。

 どうか、はしゃぎ過ぎてテーブルに、ぶつからないでね。と心の中で願う。

 先輩のお母さん手作りのシナモン・アップルパイを戴きながら、全国大会の話をしていた。


「へぇ~恋人の聖地かぁ。私も行きたかったなぁ、あては居ないけど。しかし、よくそんな所知っていたね」


「実は、名古屋に行く前に事前にガイドブックで調べて、寄って来ました」


 褒めてもらって、調子に乗って口が滑ってしまった。

 まあ、でも正直に事実を言っただけなのだけれど、困ったのはそのあとの足立先輩の洞察力。「ふぅ~ん」と言って私の顔をマジマジと眺めたあと、


「じゃあ千春はそこで、夕日に色づく浜名湖を眺めながらロマンチックな気分に浸って、江角にキスをせがんだ。と言うわけだ」


 私からキスをせがんだのは、その前に寄った元城町東照宮。浜名湖ハートロックでは、江角君からキスをしてきたのだ。

“当たらずとも遠からず”だけど、そこまで説明すると、また何を聞かれるか分からない。

“触らぬ神に祟りなし”のことわざ通り、ここはスルーしてニコニコと「違いますよぉ!」と甘えた声で返事をした。


「じゃあ、キスしなかったの?」


「しましたけど……」


 質問を“いなした”つもりだったのに、結局“寄り切られて”しまう。

 この辺の話術が、敵わない。

 足立先輩は、じーっと私の顔を見つめたあと、思いもよらない事を言った。


「でも、いつまでも、生殺しって言うわけにもいかないでしょ」


「生殺し?」


「そう、生殺しよ。千春もロンを育てているんだから分かるでしょ。男の子って言うものを」


 そう言われても、何のことだか分からないでいる私に「あーもう。これだから千春は困るのよねぇ」と、ひとりごとのように呟き、丁度その時にロンとラッキーが私たちのところに走って来たから、その話はここで打ち切られた。


「ねぇ。クリスマスにスキーに行かない?」


「すきい、ですか……」


「そうよ。あの雪山からダーッと降りてくるやつ。やったでしょ高校のスキー合宿で」


「ありますけれど、なんで急にスキー、なんですか?」


「何となくねっ。ホワイトクリスマスなんて楽しみたいなぁっと思って。あら、千春もう予定入っているの?」


 クリスマスまで、まだ一か月以上もあるので当然何の予定もいれていない、ホワイトクリスマスは魅力的だけど出来るなら江角君と一緒に居たいし、でも足立先輩とも一緒に遊びたいから返事を迷っていた。


「実はさ、里沙にも声を掛けている。っていうか、里沙がメインなんだけど」


「里沙を……」


「そう、独身最後のクリスマスになるだろ。それで何か企画しようと思ってなっ」

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