恋人たちの聖地⑧
東名高速に乗り沼津を過ぎた辺りから、右手に富士山が見え始めた。
高い空に、スーッと背伸びをするように薄青色のすそ野を広げるその姿は、なぜかしら希望を与えてくれているように思える。
ロンにも見せてあげたかったな。でもロンはバリバリの現実主義だから、富士山を見ても“ふぅ~ん”と、せいぜいあくびをするのが関の山かな?なんて思いながら、運転中の江角君に「凄いね!凄いね!」と感動のお裾分け。
もちろん真面目な江角君は運転中なので、たまにチラ見する程度しかできないので可哀そう。
それなのに、富士山を見てひとりで燥いでいる私にテンションを合わせてくれて、気兼ねなく楽しめる雰囲気までつくってくれている。
富士川サービスエリアに寄って、やっと江角君と一緒に見る事が出来た。
ここから見る富士山は、今さっき通ったばかりの富士川と、それに架かる橋を添えた姿で私たちを出迎えてくれカフェのオープンデッキからそれを見ていた。
富士川サービスエリアで富士山を堪能してから、また出発。
「ごめんね、運転できなくて。来年は運転できるようにするから」
そう、私は未だ運転するどころか、免許すら持っていない事を謝ると、江角君はそんなこと気にすることはない。と笑って「鮎沢が運転すると、ロンが寂しい思いをするだろう」なんて優しい言葉をかけてくれる。
富士川サービスエリアを出ると、今度は駿河湾の景色が私たちを出迎えてくれた。
霞が掛かった東京湾ではなく、青く雄大なその景色は心が和む。
焼津からしばらく内陸部を通り、浜松西インターチェンジで高速道路を降りると、海の香りがした。
私たちが最初に向かったのは浜名湖ガーデンパーク。
広い園内は広い芝生が敷き詰められた広場と、街のエリア里のエリアと色とりどりの花たちと一緒に三種類の景色が楽しめるようになっている。
広い敷地内はペット同伴も良いようで、こういうのを見ると直ぐにロンと一緒に来たかったなと思ってしまい、折角連れて来てもらった江角君に申し訳なく思っていると「今度来るときはロンも連れて来ような」と見透かされてしまう。
でも、こんな所に江角君とロンと三人で――いや、足立先輩とラッキー、瑞希先輩とマリー、それに美樹さんと動物愛護センターの犬や猫たちと一緒に来られたら、どんなにか楽しいだろうと想像してしまうと心がウキウキして江角君の手を引っ張って駆けだしていた。





