恋人たちの聖地②
瑞希先輩のオーストラリア・ゴールドコーストでの語学留学の話を聞いていて、いいなと思う反面、私には出来ないとも思った。
それはロンが居るから。
ロンが足かせになっているってことではなく、私には自分のための一ヶ月より、ロンと過ごす一ヶ月の方が重いと言うだけ。
その一ヶ月で、自分の人生が思いもよらない幸運に恵まれるという約束があったとしても、私にはロンと過ごす今を捨てられない。
帰りは足立先輩の車で送ってもらった。
「百瀬楽しそうだったね。羨ましい?」
運転する足立先輩に聞かれた。
「いいなって思うけど、羨ましいとは……」
「だろうね」
そう言ったあと足立先輩は「千春は、絶対に留学しない」と宣言する。
「なんで?」と私が聞くと「ロンが居るから」と続けた。
でも私は、ロンが居なかったら出来たのにとか思わないし、瑞希先輩がマリーが居るのにとも思わないことを説明すると「知っている」と返された。
だから、どうして?と聞くと
「二人を見ていれば分るよ。千春はロンが悲しんだり寂しがるようなことは決してしないし、ロンも千春が悲しんだり寂しがるようなことは決してしない。でしょ」
「ハイ!」
嬉しくて、まるで小学校に上がったばかりの子供のように、良い返事を返すことができて、隣に座っているロンも起き上がって足立先輩と私の顔をキラキラと目を輝かせて見ていた。





