青い夏の日⑬
コテージに戻ると、甲本君が砂の上に寝転んでいた。
「そう言えば甲本、どうするんだ?寝床」
江角君の言葉で思い出した。
もともとコテージは三人部屋。今回は、そこに補助ベッドを入れてもらって四人部屋として使っている。
部屋は広いから五人くらい平気で入れるけれど、ベッドはない。
「んー?俺と佳子は野宿するつもりで寝袋を積んできたんだけど、演奏会のお礼に泊めてくれるらしい。あっ佳子はそっちに泊まらせてもらうから」
何だか甲本君は少し不満気な口調。
どうやら、この砂浜に寝転んで夜空を眺めながら寝てみたかったらしい。
甲本君がそうだから、高橋さんもそうするつもりだったのだろう。
しかし、寝袋ひとつで野宿しようとしていたなんて、高橋さん意外にワイルド。
寝袋に包まり、並んで星の語らいをする恋人同士って、何だか憧れる。
それに佳子だなんて名前呼び捨てって、羨ましい。
だって私たちって、まだ中学で初めて会った時のまま、鮎沢に江角君だもの。
「人ん家だから、俺そろそろ行くわ」
甲本君はガバッと起き上がると、オーナーさんの家に歩いて行った。
甲本君と入れ替わりに茂山さんが来た。
「ごめんな。本当ならオーナーと知り合いの俺が行けば良いところなんだけど、オーナーがどうしても甲本君に泊まって欲しいと言うものだから」
「あのオーナーさんって、もしかしたら音楽に携わる仕事か何かしてませんでした?」
江角君が聞くと、茂山さんは驚いた顔をして「どうして?」と聞いた。江角君が曲を聞く雰囲気が一般の人と違うオーラを持っている気がしたと言うと、茂山さんは急に笑い出して教えてくれた。
あのオーナーさんが、元テレビ局のプロデューサーだったこと。
そして、私でも知っている人気音楽番組などの音楽番組の制作に携わっていたことを。
「じゃあ」と江角君が言うと、茂山さんは「そう言うことだろうね」と微笑む。
私には何のことかさっぱり分からなくて「なに?」と江角君に聞くと、茂山さんはいかにも愉快そうに笑った





