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青い夏の日⑩

 バーベキューが終わり後片付けも澄んだ頃、オートバイの音が近づいてきた。

 ドカドカと低い音を奏でるオートバイの音がコテージの近くで減速する。


“暴走族!?”一瞬不安になる。


 恐る恐る覗いてみると、ステッカーだらけのヘルメットを被った男の人が私に手を振って近づいて来て、正直怖い。なのにロンは私を守るどころか、そのヘルメットの男に尻尾を振って近づこうとする。そして男の後ろにもう一人。


“駄目よ、ロン!”


 心の中でそう叫んだら、ロンは何故か嬉しそうな顔をして私を振り返る。


「ぃよう!鮎沢。久しぶり」


 ロンに気を取られていた隙に、オートバイの男はヘルメットを取って、私の名前を呼ぶ。

 なんだか聞き覚えのある声。


「鮎沢先輩。お久しぶりです!」


 ヘルメットを取ると、それは甲本君と高橋さんだった。


「えっ。なんで?仕事で来れないんじゃなかったの?それに高橋さん、部活は?」


「ばーか。俺が本気になれば、三日分の仕事も一日で終わらせることくらい朝飯前よ!」


「今日はチャンと練習してきましたよ、そして明日は課外練習ってことで部長の許可を取って来ました」


 私たちが抜けたあと、吹奏楽部は今川さんに引き継いでもらっている。そして今年も県大会を突破し、もう直ぐ東関東大会が始まる。少し心配になって「来てもらえて嬉しいけれど、練習の方は大丈夫なの?」と聞くと、高橋さんは「師匠付きですから」とテヘッと笑った。

 初めて会ったときは、ショートボブに黒ぶち眼鏡の無表情で少し怖かった高橋さんが、今では明るくて可愛い女の子になっていて嬉しかった。


「おい。いつまでも立ち話していないで入れよ」


 伊藤君が顔を覗かせて、甲本君たちに言うと、甲本君は「うっせえぞ、中国のプラモデル屋!」と意味不明な事を言って入って来た。


「中国のプラモデル屋って何?」

 後ろにいた江角君に聞くと「さあ?」と返事が返って来たけれど、コバが「“トランぺッター”ですよ」と答えてくれた。そう言う名前のプラモデルを作っている会社があるそうで“トランペット奏者”を意味する“トランぺッター”とプラモデル会社を引っかけた、甲本君流の分かりにく~いギャグ。


「あれ?甲本、ドラムは?」


 楽器を持っていない甲本君に里沙ちゃんが聞くと、リュックから取り出した“折り畳み式電子ドラムセット”を高橋さんに渡し、甲本君は数本の木切れと空き缶を手に持ってニコッと笑う。

 そう言えば中学の時に、山の上のキャンプ場で音楽会をしたとき、甲本君は周りにあった木や石ころを上手に叩いてリズムを取っていたことを思い出した。

 メンバーが揃ったところで、先は独奏でご挨拶。

 茂山さん、テナーサックス。

 里沙ちゃん、アルトサックス。

 伊藤君、トランペット。

 京子ちゃん、トロンボーン。

 コバ、ファゴット兼、電子管楽器。

 足立先輩、クラリネット兼、オーボエ。

 江角君、ヴァイオリン兼、電子ピアノ。

 高橋さん、電子ドラム。

 甲本君、原始ドラム。

 私(鮎沢)、オーボエ。

 そして最初の演奏は、この機会を設けてくれた茂山さんに敬意を表して『夢はひそかに』から始めた。

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