青い夏の日②
八月に入って直ぐ、千葉県の九十九里浜にあるコテージに向け出発。
私たち女子チームは、足立先輩のワンボックスに里沙ちゃんと京子ちゃんと私の三人&ラッキー、とロン。
茂山さんのワンボックスにはコバと伊藤君、それに江角君で、男女四人ずつの合計八人と犬二匹。
行きは横浜で京子ちゃんを拾い、首都高速湾岸線から東京湾アクアラインを目指す。
川崎の工業地帯から海底トンネルに入り、そこから出ると道路が何本にも分かれて、どこをどう行けば良いのかさえ分からない。
万が一道を間違えて逆走したらと思うと、怖くて思わずロンを抱き上げた。
「大丈夫よ、チャンと先導車がいるし、それにナビだってあるんだから」
ルームミラーで私を見た足立先輩に笑われた。
一応犬用のシートベルトを買って装着させてはいるものの、大丈夫なのか不安。
羽田空港を飛び立つ飛行機が見えたと思う間もなく、またトンネルに入り、そして再び地上に出た所が“海ほたる”。
海の上にポッカリと顔を出した島は、巨大なパーキングエリア。
駐車場に車を停めて、足立さんと私は島の先端にあるペット休憩所にラッキーとロンを連れて行く。
お店がある中心部からは大分離れていて、人も少なくて開放感があるばかりでなく、周りの景色が良く見渡せる。
ここは東京湾の、ど真ん中。
海風が心地いい。
「ねえ。江角君とは、どうなの?」
「んっ?」
こういったとき、どう答えれば良いのか分からなくて、聞き返すようになってしまうのが恥ずかしかった。
「ヴァイオリン凄く上手くなったみたいね」
「知っているんですか?江角君がヴァイオリン始めたこと」
「そりゃそうだよ。だって散歩のコースだもの」
そうか……。足立先輩の家は、私の家よりあの河原に近い。
ラッキーの散歩のコースになっていても、おかしくはなく、当たり前と言えば当たり前。
江角君との練習中に、合わなかったのが不思議なくらいだ。
でも、なぜ?
私の表情から、考えている事を察したのか足立先輩が答えてくれた。
「千春の恋路を邪魔するほど、野暮じゃないからね」





