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月のなくなった夜⑳

 京子ちゃんを駅まで送り、ホームへ消えて行く後姿を目で追いながら、これで心の闇が消えてくれればと祈っていた。

 家に戻り、玄関を上がった廊下で、今日もお友達の前でキチンとお利口さんで居てくれたロンにナデナデして抱きつくと、ロンが前足を私の肩に乗せる。

“もしや……”と思っていたら、案の定私の上半身に体重を乗せて来て、久し振りに押し倒された。

 それからは、いつも通り。

 私の顔中をペロペロと美味しそうに舐め回す。

 相変わらず、息も苦しくなるほどの凄いペース。

 でもね、私はもう高校生ではない。

 あと一年も経てば二〇歳。立派な成人なのだ。


“ええい!このくらい!”


 廊下の板に肘をついて上体をグイっと持ち上げる。


“少し上がった。手ごたえアリ!よーし、このまま起き上がるぞ!”


 グイっと腕に力を入れてみた。だけど、これ以上起き上がれない。

 それどころか、次第に体が元の位置に沈んで行く。

 ?ロンが顔を舐めるのを止めている。

 と思ったとき、気が付いた。

 ロンが顔を上げて私をジッと見ていること。

 上体を起こして、より多くの体重を前足に掛けて私を起き上がれないようにしている。


“これが男の本能なの?”


 そう思うと、更に力が抜けてくる。

 それはまるで、ライオンに噛みつかれて倒されたトムソンガゼルのよう。

 そして、ロンが持ち上げていた顔を降ろし、私の顔を舐めようとしてきたとき思った。

 肉食獣に捕まえられた草食動物が食べられるのが動物の世界の習いなら、ロンに押さえつけられて身動きできないのは、男女の習い。こう見えてもロンは男の子だ。

 ロンが再び顔を舐めだす。

 もう観念している私に気が付いたのか、今度は心行くまで味を楽しむように優しくゆっくりと。

 もう気が済むまで舐めて頂戴。

 諦めてそう思ったときポケットの携帯が鳴る。


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