月のなくなった夜⑬
京子ちゃんはロンを撫でながら、今まで話してくれていなかったことを話してくれた。
驚いたのは、京子ちゃんの家でリョウを飼うときに、もう一匹ケイと言う犬も一緒に飼っていたこと。
ケイと言うのは、おそらく京子ちゃんの“京”の字から取った名前だろうことは直ぐに分かった。
飼い始めたのは、小学一年生の時。
丁度、京子ちゃんが双子の姉と音楽教室に行くようになった頃。
そして、そのケイは散歩中に突然居なくなる。
京子ちゃんが、持っていたリードを放してしまったから。
故意ではない。
大人しく散歩しているときでも、何かに驚いたり興味を惹かれたりすると犬は急にリードを引いてしまうことがある。
そのとき、リードが手から抜けないように、リードの輪の部分を一旦手首に通し絡めるように握る。
普段の散歩は、お父さんかお母さんがリードを持ち、二人の姉妹は付いて行くだけ。
しかし両親が外に出ていた日に、二人だけで犬を散歩に連れ出した。
リョウもケイも、まだ三か月ほどの子犬。
小学一年生でも大丈夫だと思った。
誘ったのは京子ちゃん。
そして、逃げてしまったのはリョウ。
「えっ!リョウが逃げたの?」
黙って聞いていた私は、そこで口を挟んでしまった。
「そう。お互いに自分の名前から一字取った子を連れていたのだけれど、姉から交代して見ないかと言われて、リードを持ち替えたときにリョウが走ったの」
「でも、見つかったんでしょ?」
「ううん。それっきり」
では、交通事故で亡くなったリョウは一体誰?
私の疑問に直ぐ京子ちゃんが答えてくれた。
「その日から、ケイはリョウとして生きることになったの」





