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月のなくなった夜⑨

「そう、そこの所なんだよな……」


 私の考えが纏まるのを待っていたかのように、海を見つめたまま江角君が言った。


「双子だから仲が良いと思っていたけれど、必ずしもそうではなかった!」


 私が大きな眼を見開いて、まるで犯人が分かった探偵のように江角君を指さして言うと、江角君は優しく笑って私の頭をクシャッと撫でる。


「他人の問題に俺たちが変に詮索することは良くないけれど、一緒に産まれたのに“姉妹”と言う格差をつけられたことに反発も有ったのかも知れないね」


「やっぱり闇は、あったんだ」


「鮎沢なら、その辺りに直ぐ気が付くだろうと思って」


“思って”心配して、ここで待っていてくれたんだ。

 でも私はハッキリと京子ちゃんの“闇”に気が付いたわけではない。

 ただ……、ただ寂しくて江角君の声が聴きたくなっただけだ。

 そのことを正直に話すと、江角君から“分からなくてもいい。感じてあがられることが大切だと思う”と言われた。

 そのとき思い出した。京子ちゃんの部屋に差し込んだ赤い夕陽が、血の色に染まって見えたこと。

 でも、京子ちゃんは何故、またここに帰って来たのだろう?

 九州、いや関西にも有名な音楽系の大学は沢山あるはずなのに。

 江角君は、京子ちゃんのお姉さんがオーボエを習っていたことを知った時から、ズットこの事が気になっていたそうだ。

 そう教えてくれて、江角君が「帰ろうか?」と言って席を立つ。

 私も「うん」と答えて、後に続く。

 江角君は、いつも私の考えている事を当ててしまうけれど、私だって江角君の行動パターのうち幾つかは分かる。

 こうして急に場所を変えようと言い出して背中を見せるときは、照れている場合が多い。

 ……、だ・か・ら・なのかな?

 急に、ヴァイオリン習い始めたのって。

 そう考えると“愛されている喜び”が体の中から沸々と沸き上がって来て、その背中に追いつくと思いっきり体を寄せて腕を絡めた。

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