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月のなくなった夜⑧

 どうして大学の帰りに海を見ていたのか聞きたかったけれど、そこには私が勝手に立ち入ってはならない何かを感じた。

 それに“どうして”で始まる質問を続けざまに投げかける幼稚さにも抵抗があったのかも知れない。だから気になっている心とは裏腹に“ふぅ~ん”と、わざと気のない返事を返す。


「なあ、トロンボーンとオーボエの組み合わせって、どう思う?」


「!?」


 急に、何を言い出したのか分からないでポカンとして江角君を見ていた。


「唐突でゴメンな。客観的にみて“合う組み合わせ”だと思うか“合わない組み合わせ”だと思うか?ってこと」


 江角くんはトロンボーンを演奏するから“合う組み合わせ”だと答えたい私だったけれど、客観的にみると“合わない組み合わせ”と答えるしかない。

 江角君は、私の答えに「だよな」と答え、真っ黒な海を見ていた。

 その姿は、どこか寂しそうに見え、私は言った。


「でも、ヴァイオリンとの相性は最高だよ」って。


 言ったあと、急に思に思いだす。

“何故、京子ちゃんは亡くなった涼子さんと合わないトロンボーンを選んだのだろ”うと。

 普通、姉妹なら同じ楽器を選ぶのではないか?

 そうでなかったとしても、一緒に演奏し易いように“合う楽器”を選ぶのではないかと。

 姉の涼子さんがオーボエを選んだのなら、妹の京子ちゃんも同じ木管楽器の中から選ぶはずで、妹の京子ちゃんがトロンボーンを選んだのなら、姉の涼子さんも金管楽器を選ぶはず。

 どちらが先に楽器を習いたいと言い出したかは分からないけれど、この楽器の選択は普通間違いがないはず。

 亡くなった犬の名前は“リョウ”

 屹度、涼子さんの名前から取ったものだろう。

 そして親が関与しない限り、子供の多くはピアノか、リコーダーから木管楽器へと流れて行くはずで、明らかに京子ちゃんのトロンボーンは不自然のように感じた。

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