月のなくなった夜⑥
「バイバイ!またバイトで宜しく♪」
京子ちゃんは最後まで明るかった。
私は、いらないことを考え過ぎていたのかも知れないと、後悔しながら手を振った。
余計な事を考えなければ、もっと楽しかっただろう。
赤かった空は紫色に変わり、西の空には太陽に取り残された金星が輝いていた。
駅に着いて電車に乗る前に江角君に電話をした。
何だか無性に声が聴きたくなって。
本当は合いたかったけれど、午後の講義はもうとっくに終わっているから、それは叶わないだろう。
電話に出た江角君は、意外にも近くの山下公園にいると言うことだったので、私も関内駅で降りて公園に向けて走る。一秒でも早く江角君に会いたい。
そして一秒でも長く、江角君と居たい。
公園の入り口に背の高い影が、長い手を振っていた。
“江角君だ”
私は、ラストスパートをするようにスピードを上げて、そのまま江角君の胸に飛び込む。
まるでゴールに着いた駅伝ランナーのように。
「どうして?」
私は聞く。
何故ここに居たのかと。
「なんとなく」
江角君に肩透かしをされる。
でも、なんとなくなんて嘘。
屹度、私を心配してここに居てくれたのだと自惚れる。
「どうだった?」
”やっぱりね”
「楽しかったよ」
そう言って、江角君の腕に自分の腕を絡めた。





