月のなくなった夜②
「素敵でしょ!このキャンパス」
私の心に過った彼女の暗い過去とは裏腹に、京子ちゃんは明るい声で話し掛けてくる。
たしかに素敵なキャンパスだ。
周囲を囲む緑の木立とも上手く調和していて、何年かに一度でも、ここから妖精が巣立つと言っても不思議ではない気がする。
そしてその妖精の“子”が今目の前にいる。
校庭で京子ちゃんと立ち話していると、制服を着た生徒たちの群れが私たちの横を通り過ぎて行く。制服は二種類あるみたい。
驚いて見ている私に、それが中学・高校の生徒たちだと言うことを京子ちゃんが教えてくれた。
そして、もう一つ。
京子ちゃんがここに来るのは週二回だけだと言うことも。
週二回だけしか通っていなかったら、単位取得が難しくなるのではないかと心配すると、それは緑山キャンパスにチャンと行っているから大丈夫だと教えてくれた。
“?”
ふたつのキャンパスに通っていることの意味が理解できていない私に気が付いた京子ちゃんが詳しく説明してくれた話によると、山手キャンパスには好きな先生に教えてもらうために来ていると言うことだった。
そして、それが終わったあとにいつもバイトに来ているので、私はてっきり山手に通っているものと思っていた。
ある気ながら、そんな話をしているうちに、あっと言う間に京子ちゃんの家に付いた。
大学の坂を下って十分くらいの所。
高級住宅地に、さっきの大学と似た雰囲気の洋館が京子ちゃんの家。
“カランカラン♪”
玄関のドアを開くと、カウベルの様な鈴が綺麗な音を立てて来訪者がある事を伝える。
直ぐに奥から京子ちゃんのお母さんが出て来て挨拶をする。
京子ちゃんよりも少し小柄な人で、欧風な雰囲気を持つ京子ちゃんと違い、博多人形のような純日本風の女性。
いずれにしても、お母さんも飛び切りの美人。
洒落た手すりの付いた階段を、京子ちゃんの後に行いて上がると、そこには京子ちゃんたちの部屋があった。





