ミルクを零した河⑩
直ぐにシャワーを浴びたかったけれど、食事の後片付けが遅くなるので先に食卓に向かった。
一人だけ遅い夕食を取り終わるまで、お父さんもお母さんも、そしてロンまでもがリビングに行かず一緒に居てくれた。
食事が済み、食器を洗おうとするとお母さんから直ぐお風呂に行きなさいと言われて素直に従う。
そして、お風呂に行く時もロンはエスコートしてくれた。
お風呂から上がって、バスタオルを体に巻いたまま濡れた髪を乾かす。
ドライヤーには、マイナスイオン発生機付きのドライヤー。
なんでも、髪だか頭皮だかに良いらしい。
私が髪を乾かすのをジッと見上げているロン。
屹度君は、癒しイオン発生機を持っているのだ。
髪を乾かしながら、家にようやくたどり着いたのが嘘のようにリフレッシュされた自分に気が付く。
そう言えば、玄関でロンと横になっているときにお母さんから“新婚旅行は後にして”と言われた事を思い出す。
私がそのことを思い出した途端、何故かロンの目がタレ目になった気がした。
私はロンの鼻先を指でつついて
“プチ新婚旅行、行きますか?”と、尋ねるとロンは直ぐに伏せていた体を起こし、笑顔を見せた。
直ぐに服を着て、夜のお散歩。
疲れ果てて帰って来たのが嘘のように体が軽い。
ロンと軽快に走る。
まだ夏前の涼しい風が気持ちいい。
しばらく走って、いつものベンチに腰掛ける。
空を見上げると、今夜は快晴。
チラッとロンを見ると、いつものように私につられて空を見上げてから直ぐにその目を私に移す。
ロンの頭を撫でて、再び顔を上げる。
空には数機の飛行機が、まるで交差するように色々な方向へ翼端灯を点滅させながら星の間を移動する。
気が付くと冬の空には無かった、夜の闇の薄いところが微かに分かる。
屹度、天の川だ。
だけどどんなに晴れていても、ここからでは微かに分かる程度が精一杯。
“新婚旅行に天の川見に行こうか!”
不意にロンに話し掛けると、ロンは喜んでワンと返事を返し、私の膝に手を乗せた。





