ミルクを零した河⑧
初日は三人揃って、社員の村越さんにマニュアルに沿って接客の仕方や一日の行動の作業内容などの説明を受けてから、シフトリーダーの小林さんに一人ずつ預けられ。その間残った二人は見学と簡単な雑用を任される。
ちなみに、村越さんは二十四歳で優しそうな男性で小林さんは二十一歳の女子大生、そして店の奥で私たちを見ながら書類を整理しているの佐藤店長は二十九歳の、おじさんだ。
最初に小林さんに付いたのは里沙ちゃん。
さすがに茂山さんのお店をよく手伝っているだけに、見ていてもハッキリと分かるくらい直ぐにベテランさんと見分けがつかないくらい馴染んでいた。
先頭がこんなに出来が良いと次は相当なプレッシャーが掛かる。
次の番は私。
なんだか、まだやる前からドキドキしてきた。
少し自分を落ち着かせるために、もしも先頭の里沙ちゃんがドジばかりだったらと考えてみた。
その場合、私は友達の失敗を取り返さなくてはと思い、今よりも余計緊張して待っているに違いない。
もしも里沙ちゃんが普通だったら……。
ここまで考えたとき、普通の物差しが分からないことに気が付く。
里沙ちゃんは茂山さんのお店を手伝っているから、私には凄く優秀に見えても里沙ちゃんにとっては普通のことなのかも知れない。
そして私が、その里沙ちゃんのようにやることは、屹度普通じゃない。
普段通りでないことは失敗のリスクが上がる。
周りからどう思われても、普段通りの私のまま、気持ちを仕事に集中させて“最上級の普通でいれば大丈夫!”
「つぎ、鮎沢さぁ~ん」
小林さんに呼ばれる。
「千春、頑張ってね!」
京子ちゃんが背中を押してくれる。
「うん。ありがとう」
京子ちゃんに、そう言って小林さんの方へ向かう。
小林さんの方からは、逆に戻って来る里沙ちゃん。
お互いが、すれ違う時に手を出し合ってタッチした。
“私は、私なりに頑張るのだ”





