真夏のクリスマス②
作ったケーキや料理は撮影している。
ついでに食べているロンのことも。
撮った写真はレシピ表に貼りつけたりして管理しているけれど、一番大きな理由は美樹さんに見てもらうこと。
実はニュージーランドに旅立った美樹さんとはフェイスブックやメールなどでコミュニケーションをとっているのだ。
別れるときは辛くて悲しかったけれど、こうやってパソコンや携帯でいつでもやり取りができると分かると地球はなんて狭くなったのだろうと、お別れのときに泣いたのが恥ずかしいくらい。
私たちが、そのように通信の世界で距離感を左程意識しなくなったのに、ロンはそういう世界に入り込めない。
携帯に映った美樹さんの顔を見せても声を聞かせても、実際の美樹さんに合えたような反応はなくて、どちらかと言うと親しみよりも迷惑そう。
屹度ロンには目の前で生きているもの。
つまり実物以外は本人として認識しないのかも知れない。
美樹さんが目の前で動き
美樹さんの生の声がして
美樹さんの臭いがして
美樹さんの心臓の鼓動が聞こえて
そして、美樹さんの思いが伝わる
屹度それ以外、たとえ美樹さんの声がしても、体が動いても、ロンには全く興味のない、美樹さんとは別の物としか思えないのだろう。
ひょっとしたら、私たちだって勝手にそれが美樹さんだと信じているだけなのかも知れない。





