結婚㉑
式の間中、美樹さんと兄の二人共幸せそうに微笑んでいた。
特に美樹さんは目が合うと、私が今誰と何を話していたのかさえ理解しているような純粋で透明な眼差しを向けられて、少しくすぐったい。
なんだか恥ずかしくて、下を向きロンに助けを求めると同じ瞳を返される。
そう、その瞳の感じは、まるで同じ透明感。
ニュージーランドの大学へ行って、動物の臨床心理学や獣医師としての知識を身に着け、今はペット・カウンセラーとして動物愛護センターに勤めている美樹さん。
飼い主と逸れてしまった犬や猫、ペットに先立たれた飼い主。
飼われる者と、飼う者。
ふたつの立場で心のケアを行う。
人の見た目や行動、過去の経験や行動、知り得た知識から分析する人間の心。
心臓の鼓動や、匂いをもとに既成概念なしに判断する動物の心。
ふたつの立場に立っているから、人間の目と動物の目の二つを持っているのだろう。
ロンを膝の上に抱き寄せ、前足を持って美樹さんに手を振ると、今度は子供のような眼をして笑った。
「瞳は、心を映すんだね」
そうロンに話し掛けると、いつになく喜んでくれた。
まるで“よく分かったね”と褒めてくれるみたいに。
式の最後、リクエストがあった。
それは式典の最後、新郎新婦からのメッセージを伝えるときの生演奏。
それは事前に聞いていて、江角君と二人で練習していたのだけど、思わぬ形でお母さんも入って来た。
お母さんのハープ、江角君のヴァイオリン、そして私のオーボエで演奏する“風笛”
BGMとして押さえ気味に奏でる。
兄や美樹さんの言葉に影響されているのか、お母さんのハープの音色が深く透き通っていて、その雰囲気に合わせるように私たちも澄んだ音色を奏でた。
そして式も終わり、二人の旅立ち。
二人を出迎えるように並ぶ私たちに向け、美樹さんが後ろ向きに投げたブーケが初夏の活き活きとした空に舞い上がり、放物線を描いて私の方に降りて来る。
球技は下手だから、屹度取れない。
取れると思っていても、誰かの手が伸びてきて奪われてしまう。
そう観念していたのに、ブーケは何事もなかったかのように私の胸に降りてきた。





