結婚⑱
真っ赤な絨毯・整然と並んだ長椅子・少し暗めの室内に射すステンドグラスの明り。
壇上で待つ兄も元に、美樹さんのお父さんに導かれる白いドレス。
二人が揃い、神父さんの前で結婚の誓いをする。
指輪をはめ、正面の大きなステンドグラスに写し出されたふたりが、誓いのキスをする。
感動的過ぎて、のぼせてしまいそう。
ロンは私の足元でまるで盲導犬がそうするように伏せをして、美樹さんが気になるのか、顔だけはズット新郎新婦のほうに向けておとなしくしている。
そっと撫でてあげると、その目を上げて私を見てくれる。
幸せそうな目だ。
チャペルでの結婚式が終わり、次は披露宴。
会場を出るときに、またしても伊藤君が混ざっている事を発見した。
「ちょっと伊藤君!」
「あっ、鮎沢」
伊藤君たら悪びれもせず、堂々と私の名前を呼ぶ。
「駄目じゃないの、人の結婚式に勝手に入って来ちゃ」
「えっ!?」
とぼける伊藤君に、何て言えばいいか困り里沙ちゃんに助けを求めると、苦笑いを返されて相手にしてくれない。
今度は江角君に助けを求めると、江角君が差し出してみせてくれたのは披露宴の招待状。
“えっ。伊藤君って、誰か招待した?”
「そこじゃなくて、こっち」
江角君に見せられたのは、座席図の入った方。
「なに?」
「ほら、ここ」
江角君の指さしたところには“新婦の従弟”として伊藤真二と書かれてある。
「えーーーっ!伊藤君って、美樹さんの従弟なのー!」
そう言えば、美樹さんの苗字も伊藤。
ビックリしている私をよそ眼に、ロンがあくびをした。





