結婚⑭
江角君が伊藤君に呼ばれて行ってしまうと、通路沿いのソファーには私とロンの“ふたりっきり”。
ふたりで大人しく座っていると、とある一団に囲まれた。
その数は十数名。
若い男女を中心に、中年の人も居る。
目的は、ロン。
ただの物珍しさや、可愛いという理由で犬に近づいて来る人たちとは少し違う雰囲気。ただ友好的なだけではなく、よく犬の扱いに慣れているのが私から見てもよく分かるし、興味の持ち方も何となく学生っぽい。
ロンに関する様々なことを、私にも聞いて来て、メモを取りそうな勢い。
最初は何だか分からないで少し戸惑っていると、この一団が動物愛護センターとボランティア団体の人たちであることを中年のおじさんが教えてくれた。そして別れ際、是非一度センターに遊びに来てくださいと言われた。
綺麗なドレスや礼服を着ていても、身体には動物たちの臭いが染みついているのだろう、みんなに可愛がられて居る間中、ロンは臭いを嗅ぎまくっていた。
今更ながら、ロンたちはこの臭いからどの様な情報を得ているのだろう?
私が江角君や里沙ちゃんと合ってきた事とかは、知り合いだから分かるのは知っている。
では、ロンがまだ会った事のない人と合って来たら、それをどう理解するのだろう?
ただ、知らない男性や女性としか認識しないのか、それとも年齢や性格なんかも嗅ぎ分けるのか。
人が人の声や顔を覚えるように、犬は臭いを覚える。
だから、初めて会った人とか、頻繁に会っているかは敏感。
そして最近ロンと私が、それぞれ違う意味で敏感になっている人物が戻ってきた。
その姿を、未だ江角君の全体像が見える前からロンは気が付いて私に教えてくれた。
“んっ?教えてくれたと言うことは、二人の関係を許してくれたってこと?”





