結婚⑬
六月になり、今日は兄と美樹さんの結婚式。
私は家族だから当然出席しているけれど、なんとロンも式に出席でき式場。
兄の友人として茂山さんも参加して、その婚約者で里沙ちゃんも来てくれた。
大学は違うけれど、江角君は兄の後輩と言うことで呼んでもらえたのは良いとして、通路を江角君と二人で並んで歩いていると「よっ!おふたりさん」と調子のいい声を掛けてくる伊藤君は誰が呼んだのだろう?
“まさか江角君からここを聞いて、こっそり中に入って御馳走を平らげるつもり?”
「千春さ~ん」
少し離れた所から明るい声で名前を呼ばれる。
振り向くと、まるで女優さんのような夏花さんが居た。
決して派手なドレスを着ている訳でもない、どちらかというよりは目立たない落ち着いた清潔感のある物。
職業柄か、それが彼女の持つ魅力を際立たせている。
お母さんの後輩。
年齢も二つしか違わないのに、夏花さんは大分若々しく見える。
一般的な家庭で過ごす、何の変哲もないのかも知れない私のお母さんの結婚。
大学を入り直してまで同じ道を追い、そして永遠に分かれることになった夏花さんの結婚。
明るい光には、必ず濃い影が付いて回る。
いま、ここで結婚式を挙げる兄と美樹さん。
どうか、ふたりには平穏な結婚生活が末永く続きますようにと、心の中でお祈りした。





