結婚⑫
私事ではありますが、昨日16年一緒に暮らしていた犬のラリーが死にました。
多臓器不全で安らかな最後。
この「さよならロン。また会う日まで」を書き始めたきっかけは、そのラリー。
数えで17歳になるラリーとの最後になるかも知れない思い出にと思い書き始めました。
お話しも、最初はこんなに長く続けるはずではなかったのですが、物語のタイトルでも分かる通り最後はロンとの別れになります。
ラリーがまだ生きているいる中でお話を最後にするわけにはいかない。
書き続けることで、ラリーも生き続けてくれる。
その一心で、ここまで書き続けてきました。
昨日はお通夜。
久し振りに一緒に寝ました。
寝ていて、もっとこうしてあげれば良かったと、後悔ばかり。
せめて物語のロンと千春には、こういう思いが少ないようにしてあげたいと思います。
あの明るくて、どこまでも元気そうな女医さんに、こんな悲しい過去があったなんて思いもよらなかった。
ロンも江角君の話が、悲しい話だと分かるのか神妙に聞いている。
その様子に気の付いた江角君が“おまえ好い奴だな”とロンを撫でる。
撫でられたロンは何故か私を見上げる。それはまるで撫でてもらったことを報告するみたいに。
そして、それを見た江角君が笑って褒めた「ロンは何でも分かるし、本当に鮎沢のことが好きなんだな」と。
私が調子に乗って、ロンの頭をクシャクシャに撫でながら「えー。そうなのロン!」と、囃し立てる。
ロンはソッポ“よせよ!”と言わんばかりにソッポを向く。
夏花さんの話は興味深いけれど、好奇心で聞いて良いような話ではないので、話が途切れたタイミングで打ち切ることにした。
そして、ロンも急に相手をしてくれなくなったので、再び江角君と練習に戻る。
一緒に演奏していて、江角君のヴァイオリンが凄く心地いい。
今までの吹奏楽部では弦楽器はなかったし、有ってもベース担当にコントラバスが入る程度。
おそらくこの楽器は、フルートやクラリネットなどとも相性が抜群に好いだろう。
でも江角君のヴァイオリンに一番合うのは、オーボエだと思う。
強く演奏するときの激しさと、優しい旋律を撫でるように奏でられるメリハリをお互いに兼ね備えている。
練習の最後の曲は“風笛”
春の、ほのかに霞のかかった青空に吸い込まれるように音が天に昇って行くのを感じていると、ロンもそれが分かるのか音を追うように空を見上げていた。





