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結婚⑨

 私が何を考えているのか分かったのか、江角君はこう言った“居たんだ”と。

 過去形の意味は、あの大きなハンター邸に一人の医師として働く夏花さんの姿を思い出せば直ぐに察しがつくけれど、それは余りにも悲し過ぎる。

 二人で、しばらくヴァイオリンを眺めていた。

 江角君が“始めようか”と促す。

 “ハイ”と答える私。


「じゃあ、最初はこれでいい?」


 江角君が楽譜を取り出して指さす。


「いいよ」と返す私。


 今日の日の練習のために予め渡されていた楽譜で練習はしていた。だけど緊張する。

 理由は二つ。

 ひとつ目は、江角君との初めてのディオ。

 ふたつ目は、まだ聞いたことのない江角君のヴァイオリンに上手く合わせて演奏することができるのかということ。

 でも、私の心配は取り越し苦労だった。

 一曲目の曲は「君の知らない物語」

 人気アニメのエンディングに使われている曲。

 楽譜を見たとき“なんでアニメの曲?”と思ったけれど、演奏を初めて直ぐに分かった。

 先ず前奏を江角君が担当して“このくらい弾けるよ!”って私が合わせやすいように教えてくれる。

 それから私が主旋律を演奏し始めると、江角君のヴァイオリンはまるで風の妖精のように心地よく私のリズムの周りを優しく撫でて行く。

 アニメ曲ならではの軽快なリズムに乗って、演奏していてワクワクして、曲が終わったとき自然に二人同時に抱きついて笑った。


「すごーい!どこで練習していたの?」


「うん。夏花さんの病院で、分からない所は鶴岡先輩に教えてもらった」


「鶴岡先輩?」


「そう、夏花さんはヴァイオリン弾けないから」

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