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新しい生活⑮

 少年のように真剣なその声と、シーパラダイスのイルミネーションをバックにした表情の見えない後姿が、まだ会った事のない幼い頃の江角君を想像させて胸がキュンと鳴る。

 私は子供に接するお母さんのように、暖かさをもった優しい声で「なぁに?」と自然に答えていた。

 すると江角君は急に普段通りの落ち着いた無表情の声に戻って部活の事を聞いてきた。

 どの部に入るのかと。

 たしかに、今までやって来た音楽系だけでも三つくらいは部があったと思う。

 吹奏楽は中高と六年続けて来て、高校では念願の全国大会にも出場することができたし、金賞にも手が届いた。

“一所懸命やってきたもんなぁ……”

 自分の事ながら、心の中で自然に呟いてしまう。

 本当によくやったと思う。

 だけど大学受験を挟み、一旦はなれてしまうと何故かしらその情熱にポッカリ空洞が開いてしまったようになり江角君に問われるまで、正直大学での部活動に着いて考えたこともなかった。

 だから、正直にそのことを伝えた。

 江角君はただ「そっか」と息を吐くように返したのが印象的だった。

 部活の話を切り出したのなら、もう少し強引に誘ってくれても良いのに。

 寧ろ私は、江角君に誘ってもらえるのを待っていたのから自分で何も決められなかったのかも知れない。

 

「俺は一年間部活に入らないつもりなんだ」


 なんと、誘ってくれると思っていた江角君からは真逆の衝撃的発言が、何事もなかったように飛び出す。

 

「なんで?江角君は幼稚園に入る前からズット音楽をやって来たんでしょ、なのに何で止めてしまうの?」


 慌てて口に出してしまうと、江角君は波打ち際に立ったままニッコリと微笑み、こう言ってくれた。


「俺、鮎沢と二人で練習がしたい」


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