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星空のセレナーデ⑳

 ロンが目の前でキチンとお座りをして聞いていてくれる。

 その隣には江角君。

 そして、その隣にはマリーとラッキー。

 いつの間に来たのだろうと思っていると、曲の中にフルートともう一つのオーボエの調べが加わった。

 隣に並んだ瑞希先輩の顔を覗くと笑顔を返され、足立先輩の顔を覗くとウィンクを返された。

 正面から里沙ちゃんが手を振って私たちの小さな列に並び、アルトサックスの音が加わる。

 茂山さんは、演奏せずにロンの隣に腰掛けた。

 それから今川さんのホルンにコバのファゴット、マッサンのピッコロ山下先輩と堀江君のクラリネットに持田先生の奥さんの麻子さんのヴァイオリン、甲本君と高橋さんのドラム。

 いつの間にか江角君も加わって、聞いているのはロンたち三匹に茂山さんと先生たちだけ。

 奏でながら、思い浮かべるのは一緒に演奏している仲間たちと過ごした日々。

 伊藤君と美緒とは同じ小学校。

 飼い始めたばかりのロンを伊藤君が運動場で放してしまって、教頭先生に怒られた。

 お調子者の伊藤君と、真面目な宮崎君のトランペットは、同じ音を同じ強さで出していても直ぐ分かって面白い。

 サックスの音色が耳に入る。

 中学で会って直ぐ親友になった里沙ちゃん。

 一緒にスキーに行って、里沙ちゃんは茂山さんと仲良くなった。

 修学旅行の買い物のときに、茂山さんのお店を紹介され、そして里沙ちゃんの最後のソフトボールの試合に連れて行ってくれたのも、やはり茂山さんだった。

 いま思えば、既にあの頃から付き合っていたのだろうか。

 トロンボーンの音色で分かるのは加奈子さんの音だけ。

 江角君と京子ちゃんの音は正確に揃い過ぎて聞き分けることができない。

 瑞希先輩の優しいフルートの調べに、足立先輩のキビキビしたオーボエ。

 木管大戦争のあと足立先輩の家に行き、先輩の心の傷を知る。

 同じ傷は京子ちゃんも背負っていて、いつかは私にも訪れるかも知れない。

 永遠にその日が来ないことを見上げた星々に願うと、眼が熱くなる。

 そんな私の気持ちなんて、これっぽっちも気が付かないロンが音楽を楽しそうに聴いている。


“星よ、瞬け!そして、私の願いを神様に届けてください”


 星に願いを掛けたとき、流れ星が空の海を渡って行った。

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