星空のセレナーデ⑲
満天の星空の下に、江角君と二人。
背の高い美形の江角君が星を背負って直ぐ傍にいる。
しかも一ヶ月前にキスをした。
ドキッとしない訳がない。
それでも平静を装うように間を置かず返事を返す。
「そうね、オリオン座は何処かしら?」
声が裏返りそうになって少し咳払いをする。
江角君は、私の咳払いを無理に気にしない素振りでオリオン座を見つけて指さした。
オリオン座の赤いベテルギウスから、こいぬ座のプロキオンとおおいぬ座のシリウスを結ぶ“冬の大三角形”は、冬に比べると随分西に傾いていた。
見上げていると暗い宇宙に気持ちが吸い取られてしまいそうになる。
それを膝元に来たロンの温かい体温が引き留め、続いて江角君の“寒くない?”と問いかける優しい声が、私を現実世界へ留まらせる。
ロンの手が膝を撫でる。
催促の合図。
「僕も聞きたい」
ロンの仕草に気が付いた江角君が言った。
コクリと頷いてオーボエを構え星の空気を吸い取るように、ゆっくりと深く息を吸い込み、そして止める。
目の前に見える星の瞬きに併せてリズムを取り、そーっと息をリードに注ぐと“風笛”のメロディーが空に溶け込んだ。





