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星空のセレナーデ⑱

 恥ずかしいけれども、確かに嫉妬なのだろう。

 ふたりが並んで演奏する姿を消し去ろうと目を離すと、次に移るのは目線の向こう側に並んでドラムを叩いている甲本君と高橋さんの姿。

 慌てて目を移すと、私のすぐ斜め横に並んでサックスを演奏する里沙ちゃんと茂山さん。その後ろには今川さんと宮崎君が縦になって並ぶ。 

 どこの編成でも、トロンボーンは最後尾で前列に並ぶことはない。

 そして私のオーボエは最前列か二列目で、最後尾には並ばない。

 恋人同士で並んで演奏出来たら、どんなにか素敵だろう。

 そんなことを思いながら奏でていると、ムーンライトセレナーデの調べが心地良いらしくロンとマリー、そしてラッキーが寄り添うように横になって聞いているのが目に留まる。

 気持ちよさそうに、私たちの演奏を聴いてくれているその姿が嬉しい。

 特にロンには、誰よりも私の音を聞いてもらいたい。

 音楽のヒーリング効果は双方向なのだろう、暫くすると夢中にメロディーを奏でていた。

 ここで出す音は、よく夜空に溶け込む。

 手を伸ばせば届きそうな星々と、地上に広がるもう一つの銀河。

 夜空に溶け込んだ曲は、直ぐにでも地上に舞い降りてしまいそう。

 もしかしたら、遥か麓に見える街に住む犬や猫たちには本当に私たちの音楽が届いているのかもしれない。

 音が空に吸い込まれるように曲が終わる。

 これで、今夜のコンサートは終わった。

 楽器を手に帰ろうとして行く仲間たち。

 全員で演奏しているから、会場から沸き起こるアンコールはない。

 そう思いながら、お行儀よく育て過ぎて吠えてくれないロンたちが恨めしい。

 

「おやすみ」


 甲本君と高橋さんが、私の横を通り過ぎて坂を下りて行く。


「おやすみなさい」


 と、今度は今川さんと宮崎君。


「じゃあ、またあとで」


 これは里沙ちゃんで、隣に居る茂山さんからは“おやすみ”の言葉をもらう。

 みんなドンドン、丘のステージを下りて行き、気が付けば私と江角君のふたりっきり。


「相変わらず、星がきれいだなぁ」


 そう言いながらポンと肩を叩かれ、心臓が星に届くほどドキッとした。

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